どうやって歌うの?あの有名人が作った”音がない国歌”とは 

―こっか【国歌】―

国家的行事や国際的行事の際に国家および国民を象徴するものとして演奏される歌曲。
出典:大辞林

その国と国民を象徴するものとしての歌曲。国の式典や国際的な行事などで演奏される。
出典:大辞泉

音がないということは歌曲とは言えません。もし辞書が記す通りの定義なら、今から紹介する国歌は国歌ではないのかもしれません。国歌の存在理由の一つは自国民のアイデンティティを高めることです。無音となると、その目的を捨てることになります。そんな国歌が存在するのでしょうか?

意外とある歌詞がない国歌

歌曲は”音楽と詩の結合”から生まれるわけですが、世界を見ると”歌詞がない”国歌があります。その代表格はスペイン

曲名はスペイン王室行進曲。非公式の歌詞はありますが公式には歌詞がなく、スポーツの公式試合の際の国歌斉唱では鼻歌で歌われます。これは独立を望む同国内の一部地域が統一の歌詞をつけることに不満を抱いているため。またイタリアに囲まれたサンマリノ共和国の国歌『共和国の国歌』も同様に歌詞がありません。しかし、この国の国歌に歌詞がなぜないのかはよく分かっていません^^;

その他にも、過去の歴史を見ればファンファーレ形式でメロディのみというものがあったりと歌曲でなくとも国歌として成り立っています。そうなると辞書の言う定義が全てでないような気がしてきました。

メロディがないと曲じゃない!?

”音がない”という表現で近いのはタリバン政権時代のアフガニスタン国歌『国歌』でしょう。タリバンは「イスラムの教えでは音楽は有害なもの」として国内で音楽を楽しむことを禁止しました。国歌もその対象となり廃止されます。しかしこれはメロディがなかったのではなく国歌自体がなかったという話。やはりメロディがないと国歌というのは厳しいかもしれません。

6秒間無音の国歌

でも世界は広い。ありましたよ、音のない国歌。タイトルは

『Nutopian International Anthem』

直訳で『ヌートピア国際賛歌』。まずはどんな曲かお聞きください。

 

スピーカーの故障ではありません。音がないんです。こんなデータをあげている人も凄いなと思うですが^^;

6秒間無音という歌?曲?を国歌とする”ヌートピア”を作ったのはチョー有名人!

ジョン・レノンオノ・ヨーコです。1973年4月1日に建国し、翌日記者会見を開き大きな話題に。国の理念は名曲”イマジン”の歌詞に沿った内容になっています。現在でも運営しているヌートピアのホームページによると

 

誰もが参加でき

国土がない

国境やパスポートもない

法律もない

ヌートピアの人々全員が大使となる。

 

『ヌートピア国際賛歌』の無音の6秒間には特定の政治思想はなく対立を生まない、国境や法律にも縛られないという思いが込められています。もしヌートピアの一員になりたいのなら、この無音の6秒間の間にヌートピアンになることを宣言する必要があります。国歌を聞きながら宣言する決まりがあるというのもユニークですね^^

国歌ってなんだろう

これが国歌として成り立っているかの議論はあるかと思いますが、個人的にはありだなと思います。無音でもそこには建国者の理念があって、その理念に賛同する人々が集まり、仮想だとは言えネイションを作っているのですから。パレスチナは現在自治政府であり、国連では加盟国ではなくオブザーバーとして扱われています。国際的には独立した国とは言えません。でもパレスチナに住む人々に国歌を歌ってもらった時、彼らの”パレスチナ”に抱く想いは驚くものでした。お願いをした男の子が歌っていると、周りにいた人たちがどんどん集まってきて気付いたら大合唱に。録音に使っていたボイスレコーダーの音量メーターは歌声が大きすぎて振り切ってしまいました。周りがなんと言おうともその国の存在を求める人々がいればそれは国家になる。もちろん国歌も同様です。

と思うのですが皆さんはどう思いますか?