カナダ国歌「オー カナダ」
カナダ 国歌「オー カナダ」
タイトル
O Canada/オー カナダ
駐日大使館サイトでは「オー・カナダ(カナダよ)」と紹介されている。
作詞
【フランス語】Adolphe-Basile Routhier/アドルフ=バジル・ルーチエ
1839年5月8日、ローワーカナダ(現在のケベック州にあったイギリス植民地)のサンプラシード生まれの法律家、詩人。1873年にケベック高等裁判所の裁判官に任命され、1904年から1906年に引退するまで首席判事を務める。カナダ王立協会の創設メンバーで、1914年から1915年に会長を務めた。1920年6月27日、ケベック州サンティレネレバンで逝去。
【英語】Robert Stanley Weir/ロバート・スタンリー・ウィア
1856年11月15日、カナダ・オンタリオ州ハミルトン生まれの法律家、ライター、詩人。モントリオール市の記録係を務めた後、現在の連邦裁判所にあたる大法院の判事になる。一方で、法律関連の著作や詩を発表。それが評価され、王立学会のフェローに選ばれる。1926年8月20日ケベック州で逝去。
作曲
Calixa Lavallée/カリサ・ラヴァレー
1842年12月28日、カナダ・ヴェルシェール生まれ。11歳で大聖堂のオルガンで演奏をし、2年後にはモントリオールのテアトルロイヤルでピアノリサイタルを開催した。その後、アメリカに移住。ニューオーリンズのコンペティションで優勝し、有名なスペインのバイオリニスト、オリベラの伴奏者としての仕事に就く。ブラジルと西インド諸島でオリベラと一緒にツアーをした後、南北戦争で北軍として参加。中尉で退役後、モントリオールに戻るものの、アメリカに帰り結婚。ニューヨークグランドオペラハウスの指揮者兼芸術監督を務めたが、初演前夜に劇場所有者が殺害され、劇場が閉鎖。1872年、再度モントリオールに戻り著名な音楽家とスタジオを設立する。その後、アメリカに渡るとオルガン奏者兼合唱団長に任命され、有名なハンガリーのソプラノ歌手、エテルカ・ゲルスターと一緒にツアーを行う。作曲作品を増やした。1887年、音楽教師全国協会の会長に選出。翌年、ロンドンで開催された全国プロ音楽家協会の大会に送られるなど実力を発揮していった。長く健康状態が悪化していたが1890年秋、寝たきりになり経済的に困窮。1891年1月21日逝去。ボストン郊外に埋葬されたが、1933年カナダ・モントリオールノートルダムデネージュ墓地に遺体が移され現在でも眠っている。
採用年
1980年7月1日(制定)
成り立ち
北米植民地戦争のひとつ、七年戦争によってフランスにイギリスが勝利。1763年のパリ条約によってケベックはフランス領からイギリス領となる。
1867年、アメリカ合衆国での南北戦争が終了すると、北米も飲み込まれることに危機を感じたイギリスがカナダに自治権を与える決断をする。それまで現在のイギリス国歌が使われていた。
1880年6月24日の「フランス系カナダ人の全国会議」に合わせ賛歌を制作することになった。当初、政府関係者はコンクールを開催することを考えていたが、1月になって担当委員会が「時間が足りない」と判断。そこで、ケベック州副知事のテオドール・ロビタイユは、ルシエに作詞を、ラヴァレに作曲を依頼する。初演は1880年6月24日、ケベック市のPavillon des Patineursで行われた晩餐会だった。この時は、著名な作曲家でありバンドマスターでもあるジョセフ・ベジーナが編曲した「Mosaïque sur des airs populaires canadiens」のハイライトで使用された。
英語版の誕生は、1901年にコーンウォール公爵夫妻(後のジョージ5世とメアリー王妃)がカナダを訪れた際。子どもたちが歌った学童たちが歌った時とされる。英訳はこれがきっかけで活発に行われ、以来多くの英訳版が作られることとなる。その5年後、トロントのWhaley and Royce社が、フランス語とトーマス・ベッドフォード・リチャードソン博士による英語の歌詞付きで楽譜を出版。この頃、メンデルスゾーン合唱団がリチャードソンの歌詞を使用し演奏会で披露したところ、ルシエやフランスの新聞社が作者を褒め称えたという。
数多くの英訳が発表される中で最も人気があったのが、当時モントリオール市で記録係をしていたウィアが1908年に発表したものだった。1914年、第一次世界大戦で戦った男性を称えるため、ウィア自身が修正した歌詞が公表されると英語圏で広まっていく。国内では『オー カナダ』と『神よ女王陛下を守り給え』が入り乱れ国歌として流れることとなる。
1964年、この事態を改善するため上下院特別合同委員会を設置。1967年に公表された委員会の調査によって47のバージョンが各地で歌われていることが判明する。1968年、同委員会が勧告した歌詞の変更が織り込まれ、1980年7月1日に国歌法が制定され、正式に『オー カナダ』が国歌に定められた。
2018年1月31日、英語歌詞の「すべての息子の命令における真の愛国者の愛」から「私たち全員の命令における真の愛国者の愛」に変更し、性別を中立にする法律が可決された。
EXCELSIOR
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憲法で国歌に言及する記述はない。
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1980年に制定された国歌法によって、タイトルや著作権、歌詞や楽譜が定められている。同法律によって、歌詞とメロディがパブリックドメインであることを宣言。そのため、メロディのアレンジをすることが可能となっている。
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演奏を規定する法律はない。慣例や軍規では存在する。
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王室賛歌としてイギリス国歌『神よ女王陛下を守り給え』が定められている。
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フランス語歌詞は過去変更されたことがない。英語国歌は過去3度の歌詞変更が行われた。
【1914年 ウィア自身による修正】
“True patriot love thou dost in us command.” → “True patriot love in all thy sons command”
【1980年7月1日 「国歌法」制定】
“We stand on guard for thee” → “From far and wide”
“O Canada” → “God keep our land”
【2018年2月7日 「国歌法改正法(性別)」制定】
“in all thy sons command” → “in all of us command“
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先住民族への配慮の観点から“native land”、宗教の平等の観点から“God”の変更に関して議論がある。
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作曲したラヴァレは何度も下書きをし完成させた。興奮のあまり、原稿にサインすることもなく、急いで副知事に曲を見せに行ったという逸話が残る。
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1880年に初演となったのフランス語版は好評だったものの印象に残らないものだったようで、1891年のラヴァレの死亡記事や、1898年に出版されたルシアの伝記にも、彼の業績の中にこの曲のことは書かれていない。
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『オー・カナダ』が組み込まれた“Mosaïque sur des airs populaires canadiens”
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カナダにおける公式の場での国歌演奏『オー カナダ』と『神よ女王を守り給え』の使い分けは以下の通り。
・女王、エディンバラ公:『神よ女王を守り給え』全て
・他の王室メンバー:『神よ女王を守り給え』最初の6小節
・総督と副総督:『総督敬礼(『神よ女王を守り給え』最初の6小節の直後に『オーカナダ』最初の4小節と最後の4小節が続く)』
・首相、カナダ国防大臣:『オーカナダ』全て
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The Viceregal Salute/総督敬礼 音源
ノバスコシア総督ウェブサイト:https://lt.gov.ns.ca/sites/default/files/vice-regal.wav
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オンタリオ州、マニトバ州、ニューブランズウィック州、ノバスコシア州、プリンスエドワードアイランド州の州法では、公立の小中学校で国歌を毎日演奏することが義務付けられている。
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オリジナルの歌詞には、英語・フランス語ともに4番までがあるが、国歌として制定されているのは1番のみ。全て歌うことはほとんどない。
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非公式ではあるが、クリー語やトゥショーニ語バージョンなどがある。下記動画は1988年のカルガリー冬季五輪で披露されたトゥショーニ語バージョン
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著作権は音楽出版社のゴードン・V・トンプソンにあることが判明し、トンプソンは1970年に1ドルという名目で政府に売却することに同意した。
歌詞
【英語】
O Canada! Our home and native land!
True patriot love in all of us command.
With glowing hearts we see thee rise,
The True North strong and free!
From far and wide,
O Canada, we stand on guard for thee.
God keep our land glorious and free!
O Canada, we stand on guard for thee.
O Canada, we stand on guard for thee.
【フランス語】
Ô Canada! Terre de nos aïeux,
Ton front est ceint de fleurons glorieux!
Car ton bras sait porter l’épée,
Il sait porter la croix!
Ton histoire est une épopée
Des plus brillants exploits.
Et ta valeur, de foi trempée,
Protégera nos foyers et nos droits.
Protégera nos foyers et nos droits.
【バイリンガル】
O Canada! Our home and native land!
True patriot love in all of us command,
Car ton bras sait porter l’épée,
Il sait porter la croix!
Ton histoire est une épopée
Des plus brillants exploits,
God keep our land glorious and free!
O Canada, we stand on guard for thee.
O Canada, we stand on guard for thee.
歌詞(英語) 日本語訳
おお、カナダよ!われらが故郷、われらが祖国!
汝の子すべての中に流れる 真の愛国心
輝ける心をもって 興隆する祖国を見守らん
真の北国 堅固にして自由なり!
遠く広くから、
おお、カナダよ われらは汝を守りゆく
神よ、これからも われらの大地を荘厳で自由に保ちたまえ
おお、カナダよ われらは汝を守りゆく
おお、カナダよ われらは汝を守りゆく
(カナダ大使館ウェブサイト訳)
歌詞 カタカナ読み(製作中)
【英語】
オーキャナダ アワ ホーム アンド ネェティブランド
トゥルー ペェトリオット ラヴ イン オール オブ アス コマンド
ウイズ グロウイング ハーツ ウィー シー スィー ライズ
ザ トゥルー ノース ストロング アンド フリー
フローム ファー アンド ワイド
オーキャナダ ウィ スタンド オン ガード フォー スィー
ゴット キープ アワー ランド グローリアス アンド フリー
オーキャナダ ウィ スタンド オン ガード フォー スィー
オーキャナダ ウィ スタンド オン ガード フォー スィー
国歌に関するリンク
【canada.ca(カナダ政府ポータル) “カナダの国歌”】
https://www.canada.ca/en/canadian-heritage/services/anthems-canada.html
【canada.ca(カナダ政府ポータル) “王室賛歌”】
https://www.canada.ca/en/canadian-heritage/services/royal-symbols-titles/royal-anthem.html
【canada.ca(カナダ政府ポータル) “国歌の背後にいる人々”】
https://www.canada.ca/en/canadian-heritage/services/anthems-canada/people-behind-anthem.html
【canada.ca(カナダ政府ポータル) “「オー・カナダ」の全歴史”】
https://www.canada.ca/en/canadian-heritage/services/anthems-canada/history-o-canada.html
【canada.ca(カナダ政府ポータル) “オー・カナダ軍楽隊バージョン”】
https://www.canada.ca/en/services/defence/caf/showcasing/music/o-canada-military-band-version.html
【canada.ca(カナダ政府ポータル) “名誉と敬礼”】
https://www.canada.ca/en/canadian-heritage/services/protocol-guidelines-special-event/honours-salutes.html
【司法省 “国歌法”】
https://lois-laws.justice.gc.ca/eng/acts/N-2/page-1.html
【司法省 “国歌法改正法”】
https://laws.justice.gc.ca/eng/AnnualStatutes/2018_1/FullText.html
【駐日大使館 “カナダの国歌”】
https://www.canadainternational.gc.ca/japan-japon/about-a_propos/facts-anthem-hymne-faits.aspx?lang=jpn
【カナダ総督 “Viceregal Salute”】
https://www.gg.ca/en/heraldry/viceregal-emblems/viceregal-salute
【オンタリオ州 教育省 “ポリシー/プログラム覚書第108号”】
http://www.edu.gov.on.ca/extra/eng/ppm/108.html
【プリンスエドワードアイランド州政府 “Why the cost of equality is a lot lower than we thought”】
http://www.gov.pe.ca/photos/original/WI_KNatAnthem.pdf
【Cite Seer X “Patriotism, nationalism, and national identity in music education: ‘O Canada,’ how well do we know thee?”】
https://citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/download?doi=10.1.1.1023.9255&rep=rep1&type=pdf
【CBC “Edmonton girl to sing anthem in NHL first at Saddledome”】
https://www.cbc.ca/news/canada/edmonton/edmonton-girl-to-sing-anthem-in-nhl-first-at-saddledome-1.651358
【constitute “カナダ憲法”】
https://www.constituteproject.org/constitution/Canada_2011?lang=en
【BBC “Why the cost of equality is a lot lower than we thought”】
https://www.bbc.com/worklife/article/20180503-why-the-cost-of-equality-is-a-lot-lower-than-we-thought
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