ニュージーランド 国歌「神よ ニュージーランドを護り賜え」

ニュージーランド 国歌「神よ ニュージーランドを護り賜え」

タイトル

God Defend New Zealand(ゴッド・ディフェンド・ニュージーランド) / 神よ ニュージーランドを護り賜え

マオリ語ではニュージーランドの名称「Aotearoa」と表記される。

作詞

Thomas Bracken /トーマス・ブラッケン

1843年12月21日(1840年、1841年、1842年生まれという紹介もあり)、アイルランド・Clones生まれ。両親が他界し叔母の世話になっていたが、12歳でオーストラリアに渡り、メルボルン近郊で農業を営む叔父に預けられる。その後別の農場で働いてからの経歴は不明。
1869年に現在のオーストラリア・ヴィクトリア州からニュージーランド・Dunedinに移住。刑務所の看守として短期間働いた後ジャーナリストに転向し、活動しながら詩を書いた。1875年7月17日にはニュージーランドの民族精神を育むことを目的に創刊された「Advertiser」誌の編集長に就任。1881年にはDunedin市議、1886年には国会議員になる。翌年、議会が解散後すると政界を引退し、新聞社を運営した。その後も14冊の詩集や散文集を出版。1895年末、高級な装丁で出版した詩集が思うように売れず借金を抱える中、体調が悪くなりDunedinで余生を過ごす。1898年2月10日、路面電車の格納庫裏で倒れているところを発見されDunedinの公立病院に運ばれたが逝去。死因は甲状腺腫だった。

作曲

John Joseph Woods /ジョン ジョセフ ウッズ

1849年、オーストラリア・タスマニア生まれ。同地の役所で書記官を務めた後、ニュージーランドのLawrenceにある学校で教師になる。国歌制作後、地元でローマカトリック教会の聖歌隊長を務め、Tuapeka郡議会の書記官は55年も務めた。1934年逝去。

採用年

1977年11月21日

成り立ち

1840年からイギリスの植民地となり、『神よ 女王を護り賜え』を国歌にしていたニュージーランド。
1876年7月1日、The Saturday Advertiserが主催で、トーマス・ブラッケンが制作した「National hymn」というタイトルで5つのスタンザが掲載された詩に曲をつけ、公共放送で流す曲を選ぶコンクールの詳細が同詩で掲載された。賞金は10ギニーで、優勝曲の著作権はThe New Zealand Saturday Advertiserに帰属するとされた。応募作品はオーストラリアのメルボルンにいるドイツ人音楽家3人によって審査されることになっていた。最終的には12作品がメルボルンに送られたという。そこで満場一致で選ばれたのが“Orpheus”という偽名を使って応募したLawrence schoolの教師John Joseph Woodsの作品だった。彼は21時にコンクールの詳細を読みすぐに曲の制作に取り掛かった。その日の夜遅くにメロディを完成させるまで席を立つことはなかったと振り返っている。
1876年12月25日、ダニーデンにあるQueen’s Theatreで王立砲兵音楽隊によって初演が行われた。
1877年9月17日、ブラッケンがウッズに著作権を譲り出版と宣伝活動を引き渡す。
1897年、Richard Seddon首相がヴィクトリア女王に歌詞と楽譜を贈呈。
第一次世界大戦が勃発すると、ウッズはCharles Begg and Companyに著作権を譲渡。
1938年12月、国家100周年記念式典評議会が『神よ ニュージーランドを護り給え』を国歌にするよう政府に勧告した。
1940年5月1日、100周年記念式典に合わせ『神よ ニュージーランドを護り給え』の著作権を政府が購入し愛国歌となったことがPeter Fraser首相によって発表される。
初演から約100年後の1976年、『神よ ニュージーランドを護り給え』を国歌にすることを求める請願書が、7750人の署名を集めて議会に提出された。
1977年11月21日、ニュージーランド政府が『神よ 女王を護り賜え』と同等の地位の国歌として『神よ ニュージーランドを護り給え』を採用したことをD A Highet内務大臣の署名入りの官報で発表。エリザベス2世女王の許可を得て正式に国歌となった。

EXCELSIOR

ニュージーランドに憲法文章はない。

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首相の署名入りの官報によって採択された。

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プロトコルは以下の通り。
・両方の国歌を同時に演奏することもできるが、王室のメンバー、総督が公式に出席する場合、または王室への忠誠が強調される場合には、通常『神よ 女王を護り給え』が。ニュージーランドの国民が主眼となる時は『神よ ニュージーランドを護り給え』が使用される。
・両方同時に使用することも可能。しかし、通常は適した方が使われる。両方が行われる例として、国会議事堂の開会式、総督邸のレセプション、コモンウェルス デーやアンザック デーの全国的な行事などがある。
『神よ ニュージーランドを護り給え』を英語とマオリ語の両方で歌う場合の取り決めはない。どの節を歌うのかを選ぶこともできる。スポーツの公式イベントではマオリ語が歌われた後、同じ節を英語で歌う。
・メロディのアレンジは認められているが歌詞の変更は出来ない。
・著作権はパブリックドメインとなっている。

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2006年から手話が公用語になり、公的な場では手話がつく。

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イギリス国歌としても知られている『神よ 女王を護り賜え』も国歌として採用されており、マオリ語版もある。

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一番の“Pacific’s triple star”の解釈は現在も謎のまま。かつてニュージーランドが分割されてていた時の3つの州、三位一体など諸説あるが、ニュージーランドの3つの主要な島、北島、南島、スチュワート島を指すと解釈するのが一般的。

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国際的な公の場で『神よ 女王を護り賜え』に代わり『神よ ニュージーランドを護り給え』が流れたのは、1972年ミュンヘンオリンピックで8人乗りボート競技で優勝した時。これが独自の国歌を求める世論を高めるきっかけになった。

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20世紀初頭、『神よ 女王を護り賜え』のニュージーランドVer歌詞が制作されエドワード7世によって承認されたものの採用されることはなかった。

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作曲をしたJohn Joseph Woodsの自宅は今もローレンスにあり、個人所有のものながら観光名所になっている。

歌詞

(マオリ語)

【1】

E Ihowā Atua,

O ngā iwi mātou rā

Āta whakarangona

Me aroha noa

Kia hua ko te pai;

Kia tau tō atawhai;

Manaakitia mai

Aotearoa

【2】

Ōna mano tāngata

Kiri whero, kiri mā,

Iwi Māori, Pākehā,

Rūpeke katoa,

Nei ka tono ko ngā hē

Māu e whakaahu kē,

Kia ora mārire

Aotearoa

【3】

Tōna mana kia tū!

Tōna kaha kia ū;

Tōna rongo hei pakū

Ki te ao katoa

Aua rawa ngā whawhai

Ngā tutū e tata mai;

Kia tupu nui ai

Aotearoa

【4】

Waiho tona takiwā

Ko te ao mārama;

Kia whiti tōna rā

Taiāwhio noa.

Ko te hae me te ngangau

Meinga kia kore kau;

Waiho i te rongo mau

Aotearoa

【5】

Tōna pai me toitū

Tika rawa, pono pū;

Tōna noho, tāna tū;

Iwi nō Ihowā.

Kaua mōna whakamā;

Kia hau te ingoa;

Kia tū hei tauira;

Aotearoa

 

(英語)

【1】

God of Nations at Thy feet,

In the bonds of love we meet,

Hear our voices, we entreat,

God defend our free land.

Guard Pacific’s triple star

From the shafts of strife and war,

Make her praises heard afar,

God defend New Zealand.

【2】

Men of every creed and race,

Gather here before Thy face,

Asking Thee to bless this place,

God defend our free land.

From dissension, envy, hate,

And corruption guard our state,

Make our country good and great,

God defend New Zealand.

【3】

Peace, not war, shall be our boast,

But, should foes assail our coast,

Make us then a mighty host,

God defend our free land.

Lord of battles in Thy might,

Put our enemies to flight,

Let our cause be just and right,

God defend New Zealand.

【4】

Let our love for Thee increase,

May Thy blessings never cease,

Give us plenty, give us peace,

God defend our free land.

From dishonour and from shame,

Guard our country’s spotless name,

Crown her with immortal fame,

God defend New Zealand.

【5】

May our mountains ever be

Freedom’s ramparts on the sea,

Make us faithful unto Thee,

God defend our free land.

Guide her in the nations’ van,

Preaching love and truth to man,

Working out Thy glorious plan,

God defend New Zealand.

歌詞 日本語訳

 

歌詞 カタカナ読み

 

国歌に関するリンク

【文化・遺産省 国歌”】
https://mch.govt.nz/nz-identity-heritage/national-anthems

【文化・遺産省 “God Defend New Zealand/Aotearoa”】
https://mch.govt.nz/nz-identity-heritage/national-anthems/god-defend-new-zealandaotearoa

【文化・遺産省 “God Save the Queen”】
https://mch.govt.nz/nz-identity-heritage/national-anthems/god-save-queen

【文化・遺産省 “History of God Defend New Zealand”】
https://mch.govt.nz/nz-identity-heritage/national-anthems/history-god-defend-new-zealand

【文化・遺産省 “History of God Save the Queen”】
https://mch.govt.nz/nz-identity-heritage/national-anthems/history-god-save-queen

【文化・遺産省 “Protocols”】
https://mch.govt.nz/nz-identity-heritage/national-anthems/protocols

【文化・遺産省 “John Joseph Woods – composer”】
https://mch.govt.nz/nz-identity-heritage/national-anthems/john-joseph-woods-composer

【文化・遺産省 “Thomas Bracken – author”】
http://www.mch.govt.nz/nz-identity-heritage/national-anthems/thomas-bracken-author

Te Ara “Story: Bracken, Thomas”】
https://teara.govt.nz/en/biographies/2b35/bracken-thomas

【ニュージーランド国立図書館 “Story: Bracken, Thomas”】
https://natlib.govt.nz/records/22352745

【New Zealand Legal Information Institute “New Zealand Gazette, No 117, 21 November 1977”】
http://www.nzlii.org/nz/other/nz_gazette/1977/117.pdf

【RTÉ “The Irishman who wrote New Zealand’s national anthem”】
https://www.rte.ie/culture/2021/0203/1194787-the-irishman-who-wrote-new-zealands-national-anthem/

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