遊び心に作者の想いあり!谷川俊太郎に鏡の国のアリス・・・ 国歌と折句
皆さんは“折句”という詩の技法を知っていますか?
アクロスティックとも呼ばれますが言葉遊びでありながら、作り手の想いを読み手にインパクトを与えつつ伝えることが出来ます。今回はこの遊び心満載の折句を使った国歌を紹介します。
谷川俊太郎作 『谷川俊太郎の恋文』
あくびがでるわ
いやけがさすわ
しにたいくらい
てんでたいくつ
まぬけなあなた
すべってころべ
一見、嫌いな人への悪口を書いているように読めますが詩の頭文字部分だけを抜き並べると・・・
あ・い・し・て・い・ま・す
“悪口も愛情表現”とも読みとれる詩でストレートなメッセージを感じることが出来る内容です。折り句は作り手が本当の想いを作品に隠す手法なんですね。
もう一つ。今度は海外の事例をご紹介します。
ルイス・キャロル作 『鏡の国のアリス』
大半の人が知っているこのお話。ここにも折句の手法が使われているのはご存知でしたか?
A boat, beneath a sunny sky
Lingering onward dreamily
In an evening of July
(以下省略)
巻末の詩は一見すると物語のその後を書いたような内容ですがここも冒頭のアルファベットを並べると主人公アリスのモデルとなったと言われる
Alice Pleasance Liddell
(アリス・プレザンス・リデル)
の名前が浮かびあがります。
いかがですか?
折句が作り手の遊び心と読み手の好奇心をくすぐる素敵な技法であることが分かってもらえましたか?こんな折句を使っている国歌があるんです!国歌というと、かたいイメージがありますが・・・やっと本題です^^;
オランダ国歌『ヴィルヘルムス・ファン・ナッソウエ』
メロディが最も古い国歌ですが、歌詞に折句が使われていることでも知られています。ちなみにタイトルになっている“ヴィルヘルムス・ファン・ナッソウエ”とは今のオランダ王室の始祖“オラニエ公ウィレム1世”のことです。
1番 Wilhelmus van Nassouwe
2番 In Godes vrees te leven
3番 Lydt u myn Ondersaten
4番 Lyf en goet al te samen
(以下省略)
今使われているオランダ語とはスペルが若干違います。全部で15番まである歌詞ですが、それぞれの頭スペルを並べてみると・・・
WILLEM VAN NASSOV
そう!
オランダ王国の始祖“オラニエ公ウィレム1世”の名前が出てくるんです。実は作詞者が宮廷のお抱え詩人でした。詩だけでなく多彩な才能があった人物だったようです。
現在は国歌になっていますが元々は国王のために作られた詩。主人の名前を入れることで自身の忠誠心をインパクトある伝え方で表現したかったのでしょう。
いかがでしたか?遊び心を感じることが出来る国歌。身近な存在になってきましたか??