国歌と政治家
国歌と政治はとても近い関係にあります。そこで政治家たちは様々な形で国歌を利用します。時には国を鼓舞するため、時には人心を掌握するため、時には自身の保身のため・・・政治家たちが歌う様子から彼らの政治理念や手腕を覗いてみましょう。
ネルソン・マンデラが歌う “神よ、アフリカに祝福を”
南アフリカ共和国で行われていたアパルトヘイト政策を廃止し、後の大統領になったネルソン・マンデラが釈放から4ヶ月後に訪れたアメリカのオークランド・アラメダ・カウンティ・コロシアムで歌った動画です。注目は現国歌の後半部分が歌われていないという店。撮影されたのは1990年、この時はまだ“神よ、アフリカに祝福を”が国歌として認められておらず“南アフリカの呼び声”のみが国歌として認められていたのです。
そのため、動画で歌われている“神よ、アフリカに祝福を”は国歌としてではなく黒人人権獲得の応援歌としての意味合いを持って歌われました。しかしマンデラの歌い方は戦いを誘うような険しい顔や身振り手振りを激しくするものではありません。むしろ控えめですらあります。周りが拳を前に出したり動きがある中、彼の歌い方はとても静かです。暴力ではなく非暴力でアパルトヘイト廃止を求めた運動方針を体現しているかのよう。それにしてもスタジアムを埋め尽くす人人人・・・アメリカでもすごい人気だったのですね^^
ちなみに現在の国歌は1997年、2つの歌を一つにするとマンデラが大統領令を出し誕生しました。
ウゴ・チャベスが歌うベネズエラ国歌 “勇敢なる人民に栄光を”
ベネズエラ第53代大統領ウゴ・チャベスが支援者とともに歌った動画。彼がどれだけ民衆の心をつかむ力に長けていたのかがわかります。Call and Responseを国歌に使うというのは考えられた手法。こんな歌い方もあるのかと驚きました^^;
自分と国民が国というくくりで一つであるというのを強く印象つけます。伴奏もなく自身の声でしっかりと歌う姿は国民たちを惹きつけたに違いありません。これがアドリブだったかは分かりませんが、さすが生前高い支持率を保った大統領ですね!
ウラジーミル・プーチンが歌うロシア国歌 “ロシア連邦国歌”
2018年2月韓国の平昌で行われた冬季五輪でロシア代表団の国歌斉唱が禁じられました。国ぐるみでドーピングを行ったというのが理由です。この時、優勝したアイスホッケーチームがその禁止事項を破り伴奏がない中、ロシア国歌を歌う事件が発生。大きな問題になりました。その後、帰国した彼らを待っていたのがプーチン大統領です。ロシア代表団のために会場を借りねぎらいの演説をしました。
「私達はホッケーチームが金メダルを勝ち取ったあと国歌を歌ったことを覚えています。しかしとんでもない理由で音楽が聞こえません」
と集まった群衆にアイスホッケー斉唱問題を語りかけます。そして呼びかけます。
「一緒に今歌いましょう! 私達の国歌を。 私達は歌うでしょう。そうでしょ?」
群衆が「やるぞ」と答えるとプーチンが答えます。
「さあ 始めよう!!」
この言葉で“じゃじゃーん”とロシア国歌の壮大な国歌が始まります。すごく演出がかっていて盛り上がらずにいられませんね。ロシア人だったら思いっきり歌いたくなるような流れです。プーチンは現国歌を復活させた立役者。思い入れが強いのかマイク片手にしばしば大勢に混じって歌っています。こういった演出力の高さは日本でのプーチンカレンダーブームに見られるような“かっこいいプーチン像”を生み出す原動力と言えるでしょう。