歌わなければならないモノ化 ”国歌”
今月1日、中国の全国人民代表大会常務委員会が、国歌を侮辱する行為を禁止する「国歌法」を可決、成立させました。
内容は国歌を適切な場所で歌わなければいけない、変え歌を使ってはいけないなど。
このニュースを見た時は「今までなかったんだ。中国だったらありそうなのに・・・」と思いましたが、これが香港でも適用されるかもと聞きビックリ。
行政長官も共産党寄りの人に変わり香港がさらに吸収されていく印象です。
このように近年複数の国で国歌に関する法律が作られています。
このページでもフィリピンの事案を紹介しました。気になる方は
【最大年収の40%!? 罰金額が半端ない国歌斉唱義務法案が可決】
をご覧ください。
上記の情報以外に今月27日のBBCの報道によると、新聞で違反者の名前が掲載される罰も科せられるとのこと。
娯楽の空間で強制されるインド国歌
「映画館で上映が始まる前に必ず国歌を流し、その間スクリーンには国旗を映すこと、館内にいる人は国歌が流れる52秒間、全員起立することを義務付ける」
法律ではなく最高裁が出した判決です。
この裁判を起こしたのは1人の男性の愛国心からでした。
2001年、とあるインド映画の中で国歌が流れた際、裁判を起こした男性が立ちあがった時に周囲からブーイングを浴びます。そこで彼は国歌が流れるシーンを削るまでこの映画を上映禁止にしてほしいと訴えました。
これがきっかけで始まった国歌に関する訴訟。
現在最高裁どまりですが、この判断が政治に影響し立法に発展することも考えられます。
別件ですがインドの映画館で起こった国歌事件を当プロジェクトでも取り上げました。
サラダボウルだったはずのアメリカ
トランプ大統領のお陰で“寛容さ”が失われているという印象が強いアメリカ。
以前、黒人が警官によって銃殺される事件に反発して国歌を歌わないスポーツ選手が続出しましたが、先月からも抗議の国歌斉唱拒否が行われています。
抗議行動はバージニア州で白人至上主義者をはじめ、ネオナチやクー・クラックス・クランなどの過激団体が集会を開いたことによって発生した暴動を受けたもの。
アメリカでは、白人と黒人の対立が一部で先鋭化しており、黒人グループに白人の運転する車が突っ込むという事件も起きています。国歌拒否は日本ではよく話されることですが、愛国心の強いアメリカで行われるのは珍しいことと思われがちですがそうでもありません。
過去エホバの証人の信者が信教の自由を理由に、またベトナム戦争時反戦を理由に国歌斉唱拒否をすることがありました。
とは言っても愛国心が強いイメージが強いアメリカで国歌斉唱拒否というのは強いインパクトがありますね。
「国歌を歌わないやつは国から出ていけ」に疑問
近年日本でも国歌を歌わない人への非難が強くなっています。
サッカー日本元代表の中田選手は、試合前の国歌斉唱で口を動かしてなかったと多くの批判を受けて以降、代表選手はみな口をあけて歌うようにしています。
“愛国心”というと響きがいいですが、強制による愛国心から歌う国歌は美しくありません。
国会議員に「国歌を流せ」と指摘されたBBCはユーモアあふれる返礼を番組終了後にしました。
国歌好きとしては国歌をみんなで歌うのがいいと思いますが、それを強制したり歌わない人たちを否定することは間違いだと思います。なぜなら、国歌とは国の賛歌です。
そして国とは国民あっての物であり、国の下に国民があるのではないのです。国を利用し特定の人を否定することは間違っているのではないでしょうか?
ですから、国歌は国民の物であり使うか使わないかは国民次第。
昨今の“国歌を歌わなくてはならない”という風潮に息苦しさを感じます。