アメリカ合衆国 国歌「星条旗」

アメリカ合衆国 国歌「星条旗」

タイトル

The Star-Spangled Banner(ザ・スター ・スパンガルドゥ・バナー)/星条旗

作詞

Francis Scott Key /フランシス・スコット・キー

アメリカ人弁護士。メリーランド州のマウントオリベット墓地にある記念碑の下で妻と一緒に埋葬されている。35歳で『星条旗』の詩を書いた。米英戦争反対派。ゴールデンゲートパークやボルチモアなど複数箇所に記念碑が存在。橋、学校、潜水艦など様々な所で名前が使われている。

作曲

John Stafford Smith /ジョン スタフォード スミス

イギリス人作曲家・教会オルガニスト。原曲『The Anacreontic Song』を作曲した。死因はブドウが気管に入ったためと言われている。彼が埋葬されているイギリスのグロスター大聖堂にはアメリカ・イギリス両国国旗が描かれた記念碑がある。

採用年

1931年3月3日

上院が国歌として認める法案を可決し、同月3日フーバー大統領が署名した。

成り立ち

1814年9月米英戦争の中、作詞者のキーはイギリスの捕虜となっていた友人の医師を釈放するため大統領の許可を得てイギリス艦に乗船した。交渉は順調だったが、13日午前7時からイギリス艦隊がボルチモア港を守るマックヘンリー要塞に攻撃を開始するタイミングだったため、攻撃計画漏洩を恐れたイギリス軍は彼も拘束する。彼はイギリス船の甲板から砲撃の様子を見ていたという。翌朝、25時間以上の砲撃に耐えた要塞。そこにたなびく星条旗を見たキーは後にその時の気持ちを「Overcome with joy(喜びにあふれた)」と言ったと伝えられている。その時、ポケットから取り出した手紙の裏に、この時の様子をしたためた。イギリスの撤退後、キーはインディアンクイーンホテルに部屋を取り、メモを基に詩を一晩で完成させる。翌日、妻の義兄で、マックヘンリー要塞で志願兵の中隊を指揮していたジョセフ ニコルソン判事に完成した詩を見せると、判事は詩を印刷するように勧めた。印刷物は要塞とボルチモア周辺で配布がされることになる。チラシには、詩のタイトルが『マックヘンリー要塞の防衛』、“18世紀のイギリスの旋律「天国のアナクレオン」に合わせて歌う”と書かれていた。同曲はジョン スタフォード スミスが1775年頃作成し、イギリスで『天国のアナクレオン』として知られていたもの(原曲はこちら)。1814年9月20日にはボルチモアの地方紙『Baltimore Patriot and Evening Advertiser』でも発表された。その年の10月19日、ボルチモアの俳優によってホリデイ・ストリート・シアターで歌ったものが歌詞と音楽が一緒に初めて演奏されたことが『星条旗』初演の記録となる。その後、編集者だったトーマス・カーによって『星条旗』というタイトルで楽譜が出版された。
南北戦争で愛国心の象徴として再び注目を集め、1890年代には軍で国旗の上げ下げの際にこの曲を流すことを義務化。第一次世界大戦中では、陸海両軍が儀式において『星条旗』を“国歌”として指定した。陸軍省は軍が演奏する際の基準の楽譜を作成するなど19世紀を通じて軍内では国歌として扱われていた。しかし、民間では国歌としての公式のバージョン誕生はもう少し先になる。
国歌として公に採用されたのは1916年、ウィルソン大統領が連邦政府内に適用される大統領令に署名したところから。これにより軍事や国の式典での使用が命じられ非公式国歌として認められる。
更に時が流れ1931年3月、議会はウィルソン大統領の大統領令を確認する法律を可決。3月3日にフーバー大統領が署名。晴れて正式にアメリカ国歌となった。

EXCELSIOR

要塞に立ち続けた旗は、司令官アーミステッド少佐の提案で1913年8月に設置された。大きさは30 x 42フィートで、制作費は当時の価格で405.90ドルだった。現物はスミソニアン協会のアメリカ歴史博物館で展示されている。

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『天国のアナクレオン』は元々、ロンドンの紳士音楽クラブであるアナクレオン協会の「協会歌」。

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原曲『The Anacreontic Song』は、以前からアメリカで人気があり様々な歌のメロディとして使われていた。キーも1805年に『When the Warrior Returns from the Battle Afar』という歌をこのメロディに乗せて作っている。

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歌詞は韻を踏んでいる。

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紙幣にも記載されているアメリカの公式モットー『In God We Trust』は原詩の第4節で使われている。

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ヨハンシュトラウス二世は『星条旗』を組み込んだ“Jubilee Waltz” “Greeting to America” “Farewell to America”を作曲した。

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国歌は法律によって定められており、合衆国法典第36編3章§301に関連する各制定法がまとめられている。

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演奏中は起立。民間人は右手を心臓に当て、現役&退役軍人は敬礼するよう定められている。民間人で被り物がある場合は、被り物を左肩に当て、右手が心臓にくるようにする。

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学校では国歌を歌うことを推奨されており、一部では義務化している所もある。

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国歌斉唱中に拳を上げる“拳の敬礼”は連帯と反抗を表す。1968年のメキシコ五輪での黒人アスリートによる“拳の敬礼”が有名。2016年にはスポーツ界を中心に膝をつき抗議を示すパフォーマンスが多く見られた。

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アメリカ政府によってスペイン語、ユダヤ語、ドイツ語、日本語版が作られた。

http://www.kokkanowa.net/americaspa/

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2010年、クリスティーズ ニューヨーク オークションで、詩の初版本が競売にかけられ500,000ドルで落札された。現存する11冊のうちの1つ。

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1914年、トーマス・エジソンによる映画会社が国歌誕生100周年を記念し、“The Birth of the Star Spangled Banner”というタイトルの映画が作成された。下記サイトで本編を見ることができる。

https://blogs.loc.gov/now-see-hear/2014/09/the-birth-of-the-star-spangled-banner-edison-1914/

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スポーツイベントで国歌が歌われるようになったきっかけは、アメリカが第一次世界大戦に参戦した翌年の1918年。大リーグ ワールドシリーズ第1戦カブス対レッドソックス戦7回のストレッチ中にバンドが“星条旗”を演奏した。これが好評で、野球界では開幕戦や祝日、ワールドシリーズなど特別な日に演奏される習慣がつく。全ての野球試合で定番になるのは第二次世界大戦時。通信技術の進歩で生バンドが不要になったことと、戦時という愛国心を育てる必要性の高まりが相まって野球での試合前の儀式として国歌斉唱が定着した。戦後、立ち上がった他のプロスポーツリーグはこれを基本とした。

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ルクセンブルクの前国歌(1839~1895)が、星条旗のメロディを採用していたという未確認情報あり

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『星条旗』が採用される前は事実上の国歌として“My Country , Tis of Thee(メロディはイギリス国歌と同じ)” “Hail, Columbia(現在の副大統領賛歌)”があったという未確認情報あり。

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宮城県多賀城高等学校の校歌の冒頭が星条旗にソックリ。
http://www.kokkanowa.net/similaramericana/

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MLB ボルチモア・オリオールズのファンたちは、本拠地で国歌が歌われる時、”O say does that star-spangle”の冒頭 ”O”を独唱者と一緒に歌う。歌詞に出てくる星条旗が掲げられた場所、フォートマクヘンリーがボルチモアにあることと、チーム名”Orioles”の頭文字がOであることから。♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

9.11アメリカ同時多発テロ直後、イギリスのエリザベス女王が、ロンドンのバッキンガム宮殿で行われている衛兵交代式で自国の国歌を演奏するところで『星条旗』を流すよう指示した。1660年から続いてきた伝統を変更した。

歌詞

Oh, say can you see,
By the dawn’s early light,
What so proudly we hailed
At the twilight’s last gleaming,
Whose broad stripes and bright stars,
Thru the perilous fight,
O’er the ramparts we watched
Were so gallantly streaming?
And the rockets red glare,
The bombs bursting in air,
Gave proof through the night
That our flag was still there.
O, say, does that
Star-Spangled Banner yet wave
O’er the land of the free
And the home of the brave?

歌詞 日本語訳

おお 見えるだろうか 夜明けの光の中に

黄昏の薄明かりの中で われわれが誇りをもって称えたあの旗が

その太い縞と輝く星は 危険な戦いの間中

われわれが見守る塁壁の上に 雄々しく翻っていた

赤い閃光を放つロケット弾 空中で炸裂する爆弾は

われわれの旗がまだそこにあることを夜通し示してくれた

おお、あの星条旗はまだ翻っているのか

自由の地 勇者の祖国の上に

(出典:AMERICAN CENTER JAPAN

歌詞 カタカナ読み

オォ セイ キャンユーシー

バイザ ダウンズ アーリー ライト

ワットソー プラーウドリィ ウィー ヘイルドゥ

アットザ トワイライトズ ラスト グリーミング

フーズ ブロストライプ アンド ブライト スターズ

スルー ザ ペーリーラウス ファイト

オア ザ ラーンパツ ウィー ワッチドゥ

ワソ ギャーラントゥリー ストゥリーミング

アンド ザ ローケッツ レッド グレーア

ザ ボムズ バースティーング イン エアー

ゲイブ プルーフ スルー ザ ナイト

ザット オアー フラッグ ワズ スティール デアー

オォ セイ ダズ ザート スター スパン ガル(ドゥ) バーナー イェート ウェーブ

フォ ザ ラーンド オブ フリー アンドザ ホーム オブザ ブレイブ

国歌に関するリンク

【ホワイトハウス “national anthem”】
https://georgewbush-whitehouse.archives.gov/national-anthem/newyork-full.html

【ホワイトハウス(バラク・オバマ) “How Our National Anthem Was Born”】
https://obamawhitehouse.archives.gov/blog/2014/09/12/week-history-how-our-national-anthem-was-born

【アメリカ 教育省 “Facts About the United States’ National Anthem”】
https://www2.ed.gov/about/offices/list/os/september11/ssbfacts.html

【スミソニアン協会“Star-Spangled Banner”】
https://www.si.edu/spotlight/flag-day/banner-facts

【スミソニアン博物館“The Star-Spangled Banner”】
https://amhistory.si.edu/starspangledbanner/the-melody.aspx

【History channel“The Star-Spangled Banner”】
https://www.history.com/topics/19th-century/the-star-spangled-banner

【BBC “What must Americans do during the anthem?”】
https://www.bbc.com/news/world-us-canada-37208404

【BBC “NFL anthem protest: How fist salute became a symbol”】
https://www.bbc.com/news/world-us-canada-37346890

【BBC “Star-Spangled Banner first edition sells for $500,000”】
https://www.bbc.com/news/world-us-canada-11914644

【BBC “From star-spangled to estrellado: US Anthem translator celebrated”】
https://www.bbc.com/news/magazine-29215415

【下院法律改定委員会 “合衆国法典第36編3章§301”】
https://uscode.house.gov/view.xhtml?path=/prelim@title36/subtitle1/partA/chapter3&edition=prelim

【VOX MEDEIA” It’s actually very strange for sports games to begin with the national anthem”】
https://www.vox.com/2016/9/3/12774172/colin-kaepernick-national-anthem-why

【MLB” Why O’s fans yell ‘Oh!’ during anthem ”】
https://www.mlb.com/news/why-orioles-fans-scream-oh-during-national-anthem