スロベニア共和国 国歌「祝杯」

スロベニア共和国 国歌「祝杯」

タイトル

Zdravljica(確認中)/祝杯

作詞

France Prešeren /フランツェ プレシェーレン

1800年12月3日スロベニアのVrba na Gorenjskem生まれ。同国で最も偉大な詩人と称される。現在のスロベニアの首都リュブリャナで高等教育を受けた後、2年間哲学を学ぶ。1921年に当時スロベニアには大学がなかったためウィーンのウィーン法科大学院へ留学。家族は神学を学ぶことを望んだがそれに反し法学を学ぶ。この頃から詩の制作を始め新聞に掲載されるなどしていた。1928年に帰国するとリュブリャナに住み弁護士として働く。しかし弁護士になるための資格が政治思想を理由に認可が降りず14年間独立できなかった。次々に起こる親友たちの死、未成年の女性に3人の子供を産ませるなど波乱万丈な時期を過ごす。1846年、念願の独立した弁護士になりクラーニに移り住むも1848年病気になり1849年2月8日逝去。

作曲

Stanko Premrl /確認中

1880年9月28日ポルドナス生まれの司祭、作曲家。リュブリャナで神学を学び、1903年に卒業するとウィーンへ留学し音楽を学んだ。帰国後はリュブリャナ大聖堂で牧師をしながら主任オルガニスト、賛美歌の作曲、オルガン学校の学長、音楽雑誌の編集者を務めた。1200の賛美歌とその他に800の作品を残す。 1965年3月14日逝去。首都には彼の記念碑がある。

採用年

1991年12月23日(国歌が定められた憲法の採択日)

1989年9月27日スロベニア社会主義共和国での憲法の改正によって『祝杯』が国歌と制定されてから変更されていないが、現体制になってからは上記が最初。

成り立ち

オーストリア帝国領時代の1843年、作曲者が生まれた地、今のポルドナスの牧師が「Kmetijskih in rokodelskih Novicahという農業・手工業の新聞に掲載される「ブドウに感謝」という記事に載せるブドウへの賛歌を書くようFrance Prešerenに依頼する(ポルドナスはブドウとワインの産地)。その依頼を受けFrance Prešerenが1844年に完成させたのが「祝杯」という7節で構成された詩だった。1848年4月26日に「Kmetijskih in rokodelskih Novicah」に掲載され初めて公表され人気になるものの、検閲により公の場での掲載が難しくなってしまう。
オーストリア・ハンガリー帝国の統治下の1905年、Stanko Premrlが留学中のウィーンから一時帰国し、ポルトナスに帰省した時に「祝杯」に合うメロディ制作を開始。ウィーンに戻った後、9月に完成させ音楽雑誌「Novi akordi」で発表する。1917年11月18日に、ユニオンホテルの大ホールで歌詞とメロディが初めて組み合わされて演奏された。
この詩や曲作りはスロベニアの民族運動に基づくもので、スロベニアはフランス帝国、オーストリア・ハンガリー帝国と様々な国に統治され『祝杯』が国歌となるのはまだ先のこと。
1918年12月1日にセルビア・クロアチア・スロベニア王国が成立。のちにユーゴスラビア王国に国名を変えると法的根拠がないまま、セルビア王国国歌『正義の神』、クロアチア王国の事実上国歌『我らの美しき祖国』、そしてカルニオラ公国の賛歌『進め 栄光の旗』をまとめた通称『ユーゴスラビア王国国歌』が慣例として使われた。
王国崩壊後は、ユーゴスラビアの『スラブ人よ』が国歌だったが、スロベニアは構成国の国歌として『進め 栄光の旗』が法的根拠がないまま使われる。
国歌の話が再び登場するのは1972年。ユーゴスラビア連邦の構成国だったスロベニア社会主義共和国で国歌制定の動きが強まる。同年10月24日最大の政治団体スロベニア労働者社会主義連合の執行委員会がスロベニア国歌についての公開討論を行った。そこで候補曲として「栄光の前進旗」(作曲Davorin Jenko、作詞Simon Jenko)、「祝杯」(7節目のみ採用)、「Our Land」(作曲Marjan Kozina、作詞Mile Klopčič)の3つが挙がった。若者を中心に「祝杯」が支持を得たが、歌いにくいのではという意見があったと言われている。
1974年には“第10条 国歌は法律で定める”と明記されたスロベニア社会主義共和国憲法が採択される。スロベニア労働者社会主義連合の執行委員会は共和国大統領と議論を続け、国歌に関する法律が採択されるまでは、「進め、栄光の旗」を公の場で使用し続けることで合意。以降何度か法的根拠をもたせる取り組みがなされたが歌詞の内容が不適切だとし頓挫。この法制化に並行して、1982年7月12日に同国の文化審議会事務局が「祝杯」の歌詞を使って、メロディを公募して国歌を決めるのが最適という考えを発表している。
1989年9月27日、スロベニア社会主義共和国議会で憲法改正が実現し、議会制民主主義を導入。この憲法改正によって国歌は『祝杯』と明記された。同日の議会では国歌が自発的に歌われ、公的の場で歌われた初めての日となった。独立前ではあったが、1990年3月29日にスロベニア国歌として合法化。
スロベニア共和国に国名変更後の1991年、スロベニア共和国憲法が採択され、そこで共和国の国歌が『祝杯』であることが改めて定められた。

EXCELSIOR

憲法では以下のように定められている。

第6条
スロベニア国歌はZdravljicaとする。

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1994年11月11日に施行された法律「スロベニア共和国の紋章、旗、国歌およびスロベニアの国旗法」では、国歌をZdravljicaの7番を歌詞にすることや、演奏する場所や時、違反した場合の罰則が定められている。

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1995年2月、前年に施行された法律「スロベニア共和国の紋章、旗、国歌およびスロベニアの国旗法」に記載されている譜面に誤りがあると指摘があり、改正案が提出された。しかしこれが審議・採択されることはなかった。(提案書は見つかったが、翻訳できず詳細は不明)

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スロベニアの2ユーロコインにはFrance Prešerenの「祝杯」から引用された“Shivénajvsinaródi”が刻まれている。

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2020年、欧州統合の理念と歴史を象徴する場所や物などを認定・登録し保護する“欧州遺産ラベル”にFrance Prešerenの詩「祝杯」が選ばれた。

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プレシェーレンが亡くなった2月8日はPrešeren Dayとされ、スロベニアの祝日になっている。

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1833年4月6日、プレシェーレンは、リュブリャナの裕福な家の女性Julia Primic(16歳年下)に教会で出会い一目惚れをする。彼女のためにいくつもの詩を書いたものの片思いに終わり、彼女はプレシェーレンの同級生と結婚してしまう。
リュブリャナ中心地のプレシェーレン広場にはプレシェーレンの銅像がある。この銅像、彼の同級生と結婚してしまった片思いの女性Julia Primicの家の窓を見つめている。

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プレシェーレンは乾燥イチジクを常に持ち歩いていたことで知られ、同地ではお土産としてイチジクを使ったお菓子などが売られている。

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プレシェーレンの生家やクラーニのアパートは記念館になっている。

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スロベニア唯一のバラ品種名ローザプレシェーレンはプレシェーレンが由来。

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2018 年6月25日、モンテネグロの国立テレビラジオセンター近くの公園に21トンのプレシェーレン像が建てられた。

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お酒を飲みながらオリジナルの詩にのせて1~7番を歌うことも。もちろん7番は立って歌う。

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オリジナルの詩は改行と行の長さをうまく使いワイングラスの形になっている。

歌詞

Živenajvsinarodi

kihrepenedočakat’dan、

da koder sonce hodi、

prepir iz sveta bo pregnan、

da rojak

prost bo vsak、

ne vrag、le sosed bo mejak!

歌詞 日本語訳

すべての民に神の祝福あれ
明るい日のために長く働く民に
私たちが住まう地球上から
戦争や争いが消えるだろう
同胞へ
誰もが皆 自由となり
敵ではなく隣人になる!

歌詞 カタカナ読み

 

国歌に関するリンク

【大統領府 憲法”】
http://www.up-rs.si/up-rs/uprs-eng.nsf/pages/Ustava-in-zakoni?OpenDocument

【政府ポータル 国家のシンボル”】
https://www.gov.si/en/topics/national-symbols/

25 years of independence Republic of Slovenia “National anthem”】
http://www.slovenia25.si/symbols-of-slovenia/national-anthem/index.html

【政府コミュニケーションオフィス The Slovenian anthem emphasises ties and friendship among nations”】
https://www.gov.si/en/news/2021-03-30-the-slovenian-anthem-emphasises-ties-and-friendship-among-nations/

【議会 スロベニア共和国の紋章、旗、国歌およびスロベニアの国旗法”】
https://www.dz-rs.si/wps/portal/Home/zakonodaja/izbran/!ut/p/z1/04_Sj9CPykssy0xPLMnMz0vMAfIjo8zivSy9Hb283Q0N3E3dLQwCQ7z9g7w8nAwsnMz1w9EUGAWZGgS6GDn5BhsYGwQHG-pHEaPfAAdwNCBOPx4FUfiNL8gNDQ11VFQEAAXcoa4!/dz/d5/L2dBISEvZ0FBIS9nQSEh/?uid=067FE7882B45BCDFC125662800363F86&db=spr_zak&mandat=VIII

【議会 “作曲家StankoPremrlとZdravljica”】

https://www.dz-rs.si/wps/portal/Home/odz/ureditev/drzavniSimboli/!ut/p/z1/tVfRlpo6FP0V–Ajw0kCJLlv4HQQ0GFGnXb05S4QcJgKscho69c33mlXdWiDs7zywiKcvc8-JyHZ6DP9UZ-V0SZfRHUuymgpn6cz61-fB7YfuAiAOD24v56E1kc-QnAN-id9ps_mZb2qn_RpsuskYv5SpGW97mzwFXRBdJJqF23KtOjsYlG9dOH1Oeq8VGmS1-nm10jeWedFLJZ5F3ZJFW2Wz_k82rOv5nmiTwFhSlNqaJYFpmakNNMizplmMcbSLDIwxUj__J_cwAvH3EE2sLuPCDzk3FGPPIBUr88OX4cc3YD3QFyDDCcAN_gtvhlwhHdHBpb0AZ8MhgMEFLXgH17xim6-wTcTHOsfomvweMgHyGcAodWCd9B79TcS7PHO7cj09voZsy3wHOrfcwwk7P3qnyJAhZfTo8YH5Lz8P-cf_nLZjf4zl-7Xz51t3o5HyO2hN_OHJ9dwPwlviOV6BIb0J14RcIR38ciU84-d4RgIBKH5Fn8cMB6T0_IrCjxp_SkEqvCINOpvBCjwLphq_D5AhWdt_cPK-t3AaMnPTOX89UlL__rq-l1DjTcceGf-ZoKz6g-Md66fZsBJ399fCsQeacs_lXh6sH-Nbbl_oU_ED6kp6eQHssnTrf5QiqqQp9v49_GSxWaWmcA1iAnSjDmiGmOUa4hYkWVGFuMAer-RAUDK8PoT4vd8KdGxzszQQm9elp5elH5kXJb-3N77x6dj0zxIM5Q_f_06s6XjEWWdfqv1x0PL04VKiLoLq3wtjU2njIrGgjw-UDFRSEbYjDmOtHSOpd8xaaJxTgwtyWIDwALI-LyFfnxZermdXpQeX5YenUnvt5mx9uVSSAf8LP1uEpWpNMxNqywWIvkiA04SJPPhatgbLmQZUf2k5WUm9Md3tOr3vmu6TBqLIBz5fQfuqWJfOMmW-237dlur_qefCaljsRTx63-NXcaEyV5VaZZWaXX1Usnhp7perf_pylzb7fZqIcRimV7NRdGFP0GexFoKPY7UV0XByPf8z5c29Tfb7SQrejE7uH3ej–c28PbIH0dHWTD2pzaH34AznZIqg!!/dz/d5/L2dBISEvZ0FBIS9nQSEh/

【議会 作曲家StankoPremrlとZdravljica”】
https://www.dz-rs.si/wps/portal/Home/is/sporocilaZaJavnost/sporociloZaJavnost/23ce533d-604b-47fc-b748-563f44939d44/!ut/p/z1/tZJBU4MwEIX_CheOdEOTAnpDD7bVdsY62sLFARIglSQ0pGD76416csZqPZjbbt7bvP0mkMIGUpn1vMoMVzJrbJ2kwfPVcjWZ3d74KFqFPrrHs2VwN_X9cYTgCVJI24JTSMa4YBOMqRcgknskLAsvD0nkTQJcEnKBLygh7-pCmtbUkNCjQ1WxF0yazkWCUb7lLqKZZJ3TO1Qfs14y4Rxzpfe2rypFX6zgrGfWv-VO7TU6cWIEifWHp_0Y1j1nAzxKpYXF9PBHClME848IPyS06Md6cb2o7OTM1B6XpYLNWeOtlW93uzS2sJU07NXA5j9p212qRuWf_yWWOY5saM1Kppke7bVt18a03aWLXDQMw6hSqmrYqFDCRd9ZatXZxF-V0AoR4YOXzPvhgJterKMufgM66ngi/dz/d5/L2dBISEvZ0FBIS9nQSEh/

【ユーゴスラビア公文書館 国歌”】
http://www.arhivyu.gov.rs/active/sr-cyrillic/home/glavna_navigacija/leksikon_jugoslavije/drzavni_simboli/himna.html

【ユーロ中央銀行 “2ユーロ”】
https://www.ecb.europa.eu/euro/coins/2euro/html/index.en.html

【Slovenia.si “Prešeren Day”】
https://slovenia.si/art-and-cultural-heritage/preseren-day/

【リュブリャナ観光 プレシェーレン広場とプレシェーレンのイチジク”】
https://www.visitljubljana.com/en/visitors/explore/things-to-do/food-and-drink/article/preseren-square-and-preserens-figs/

【TURISTIČNO INFORMACIJSKI CENTER PODNANOS “Stanko Premrl”】
http://www.tic-podnanos.si/osebnosti/

【TURISTIČNO INFORMACIJSKI CENTER PODNANOS “HIMNA”】
http://www.tic-podnanos.si/himna/

【ZAVOD ZA TURIZEM IN KULTURO ŽIROVNICA “Prešernova rojstna hiša”】
https://visitzirovnica.si/presernova-rojstna-hisa-v-vrbi/

【ZAVOD ZA TURIZEM IN KULTURO ŽIROVNICA “Največji slovenski pesnik”】
https://visitzirovnica.si/france-preseren/

【GORENJSKI MUZEJ “Dr. France Prešeren – life and work”】
https://www.gorenjski-muzej.si/razstave-in-dogodki/stalne-razstave/dr-france-preseren-zivljenje-in-delo/?lang=en

【駐モンテネグロ領事館 “A STATUE OF FRANCE PREŠEREN UNVEILED IN THE PARK NAMED AFTER THE POET IN PODGORICA JUNE 25, 2018”】
https://montenegroconsulate.si/a-statue-of-france-preseren-unveiled-in-the-park-named-after-the-poet-in-podgorica-june-25-2018/?lang=en

【駐モンテネグロ領事館 “A STATUE OF FRANCE PREŠEREN UNVEILED IN THE PARK NAMED AFTER THE POET IN PODGORICA JUNE 25, 2018”】
https://montenegroconsulate.si/a-statue-of-france-preseren-unveiled-in-the-park-named-after-the-poet-in-podgorica-june-25-2018/?lang=en

【スロベニア司教会議 “Odkritje in blagoslovitev spominskega obeležja duhovniku Stanku Premrlu, avtorju slovenske himne”】
https://katoliska-cerkev.si/odkritje-in-blagoslovitev-spominskega-obelezja-duhovniku-stanku-premrlu-avtorju-slovenske-himne

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