フィリピン共和国 国歌「選ばれし地」

 

フィリピン共和国 国歌「選ばれし地」

タイトル

LUPANG HINIRANG(ルパング ヒラーニング)‎ /選ばれし地

作詞

Jose Palma /ホセ・パルマ

1876年3月3日フィリピンのマニラ・トンド生まれの詩人。アテネオ大学を経て、1894年に独立運動に参加。健康状態が悪かったパルマは戦場へは行かず新聞「La Independencia」の制作に従事した。1903年2月12日、結核のため逝去。上院議員を務めたラファエル・パルマは兄弟関係にある。

作曲

Julian Felipe /ジュリアン・フェリペ

1861年1月28日、フィリピン・カビテ州カウィット生まれのピアニストで作曲家。幼い頃から音楽を学び教会のオルガニストや女子校の音楽教員を務めた。1896年から革命運動に参加。蜂起に参加し投獄され死刑宣告されるも無罪が認められ釈放されるとアギナルドの軍隊の一員となった。国歌制作後、カビテ州の議員、1899年には国立楽団の指揮者、1904年5月にはアメリカ海軍のバンドマスターを務めた。1941年10月2日、マニラ・Sampalocで逝去(1944年という情報もある。)

採用年

1898年6月11日

法的根拠を持って採用されたのは1998年。

成り立ち

スペインとの独立戦争中の1898年6月5日、独立運動の指導者エミリオ・アギナルド(のちの初代大統領)は独立運動の中心地だったカビテ州カウィットのピアニストで作曲家のジュリアン・フェリペに、革命家のための行進曲の制作を依頼する。「もっと感動的で荘厳なもの、敵と戦うために兵士を鼓舞できるもの、私たち民族の崇高な理想を体現できるもの」の行進曲を求めた。
フェリペは6日間で仕上げ、11日にはアギナルド邸の居間にあったピアノで、アギナルドとその副官たちに演奏したという。フェリペが「フィリピン行進曲(Marcha Filipino Magdalo)」と名付けたこの曲は、『フィリピン国民行進曲(Marcha Nacional Filipina)』と改称されその場で採用された。翌日、アギナルドが邸宅のバルコニーに立ち独立共和国を宣言したあと、国旗が形容される際に国歌が公の場で初めて流された。演奏は前日に練習をしたサンフランシスコ・デ・マラボン(現ゼネラル・トリアス市)の楽団。この時は歌詞がなくメロディのみの演奏だった。
歌詞ができたのは独立戦争の相手がスペインからアメリカになってからのこと。1899年2月にアメリカとの戦争が始まったのち、同年8月に23歳の兵士ホセ・パルマはフェリペのメロディに合わせ「Filipinas」と題するスペイン語の詩を書き、9月3日付けの新聞「La Independencia」で掲載される。この歌は、戦時中人気を博すものの、1907年8月23日にアメリカ植民政府が国旗法(No1696)」によられてしまう。公で歌うことが許されたのは議会によって法律が廃止された1919年のことだった。
1920年代になると、アメリカの植民地政府がパルマが制作したオリジナルのスペイン語歌詞を英語とフィリピノ語に翻訳することを許可。依頼を受けたのはフィリピン人作家で後に上院議員になったCamilo Osiasとアメリカ人のM.A.L. Lane。1934年にアメリカ領フィリピン諸島政府によって正式に採用された。
1938年9月5日、フィリピン国民議会は連邦法No.382によって法的にジュリアン・フェリペが作曲した曲を国歌として認めた。この時、法律上歌詞は含まれていない。

日本が統治を始めると、これまで歌われてきた『フィリピン国民行進曲(Marcha Nacional Filipina)』に代わる曲を日本政府が作ろうとする。『Awit sa Paglikha ng Bagong Pilipinas(新生フィリピン誕生賛歌)』は日本政府の依頼で、のちに国歌音楽芸術家になるFelipe Padilla de Leonによって作曲されたが国歌になることはなかった。
日本の統制下にあった1943年10月23日にはホセ・ラウレル大統領が大統領第4号にて、フィリピノ語で歌われる『Diwa ng Bayan(Spirit of the Country)』を国歌にすることを定め1945年まで歌われた。これは日本に対して民心が離れていたことへの対処だった(歌詞は現在のものと違うが、それが翻訳の問題なのか全く違うのか不明)。
1948年、Julian Cruz Balmaceda, Ildefonso Santos and Francisco Caballoが制作した『O Sintang Lupa(O Beloved Land)』が公式に採用。
マグサイサイ大統領の任期中には教育長官が歌詞の改定委員会を結成。1956年5月26日、国語研究所(Surian ng Wikang Pambansa)はIldefonso SantosとCruz Balmacedaによって改定されたフィリピノ語版国歌『選ばれし地』を公式として発表。
1998年、上下両院を通過し2月12日に大統領から承認を得た共和国法No8491によって、歌詞の内容が法文化された。

EXCELSIOR

憲法では法律によって定められるとしている。

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法律は複数ある。

現在のメロディと歌詞双方が法的に認められたのは1998年、上下両院を通過し2月12日に大統領から承認を得た共和国法No8491。

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1941年6月10日、連邦法No.634によって、No.382に罰則が追加された。25ペソ以上1000ペソ以下の罰金または1年以下の禁錮、2犯目以降は罰金と懲役が課される。

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1950年6月12日に発行された「フィリピン共和国の国旗および国歌のコードの規定」によって民間人は胸に手を当て歌うことが定められている。

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1998年6月4日に大統領が出した宣言書No1239によって毎年6月5日が「フィリピン国歌の日」に定められている。

1994年9月1日に共和国法No7805によって、ジュリアン・フェリペの誕生を祝い、彼の出生地であるカビテ州では毎年1月28日が祝日になっている。

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1934年にフィリピノ語と英語の翻訳歌詞があったが、公式にフィリピノ語で歌われたのは、ラモン・マグサイサイ大統領(任期1953~1957)の時代になってから。
法的には1965年1月7日に発行された大統領令第 137 号によって、「フィリピン共和国の国旗および国歌のコードの規定」が改定されフィリピノ語で歌われることとなった。

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国旗法が廃止され、スペイン語から英語に初めて翻訳したのは著名な女性作家Paz Marquez Benitez。

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法律ではフェリペが制作した楽譜に基づくように求めているがオリジナルの楽譜は現存していない。

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1920年代に、多くの人が歌えるようにとメロディがハ長調からト長調に変更された。

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『フィリピン国民行進曲(Marcha Nacional Filipina)』が制作される前『Marangal na Dalit ng Katagalugan(Honorable Hymn of Katagalugan)』というAndrés Bonifacio(独立運動組織化ティプナンの創設者)がJulio Nakpilに依頼し作曲された作品がある。これが国歌になるはずだったが、アギナルドとの権力闘争に破れ頓挫した。ちなみにAndrés Bonifacioはアギナルドにより逮捕され処刑されている。

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南沙諸島にフィリピン、中国、ベトナムが領有権を主張する地域に作詞家の名を冠したジュリアン・フェリペ礁がある。

歌詞

Bayang magiliw,

Perlas ng silanganan,

Alab ng puso

Sa dibdib mo’y buhay.

Lupang hinirang,

Duyan ka ng magiting,

Sa manlulupig

Di ka pasisiil.

Sa dagat at bundok,

Sa simoy at sa langit mong bughaw,

May dilag ang tula

At awit sa paglayang minamahal.

Ang kislap ng watawat mo’y

Tagumpay na nagniningning;

Ang bituin at araw niya,

Kailan pa ma’y di magdidilim.

Lupa ng araw, ng luwalhati’t pagsinta,

Buhay ay langit sa piling mo;

Aming ligaya na ‘pag may mang-aapi,

Ang mamatay nang dahil sa ‘yo.

歌詞 日本語訳

 

歌詞 カタカナ読み

バーカング マギーリュ ペルラスナングナ マギーリュ

バーヤン(グ) マギーリゥ ペ(ル)ラス ナン(グ) シーランガーナン

アーラブ ナングプーソ サ ディブディブ モイ ブハイ

アー(ル)アブ ナン(グ)プーソ サ ディディ モイ ブハイ

ルーパング ヒラーニング ドゥーカンカナン マギーピング

ルーパン(グ) ヒニーラン(グ) ドゥヤ(ン)カナン マギーティン(グ)

サーマンドゥ ルルーピッグ ディーカパシシイル

サーマンルルーピッグ ディ カパスィスィル

サガガット アット ブンドック

サダガッ(ト) アッ ブンドック サ

サシモイ アッ サラーギット モン ブグハウ

シーモイアッサ ランギッモン ブグハウ

マイビラッグ ラング トゥラ

マイディラッ アンッ トゥラ

アットアウット サパグラーヤング ミナーマハル

アッ アウィトサー パラヤン(グ) ミナァー マハル

アング キスラプ ナング ワタワトゥ モイ

アン(グ)キスラプ ナン(グ) ワタワト モイ

タングパイナ ナグニニニン

タングパイ ナーナグニーニンニン

アングビトイン アット アラウ ニヤ

アン(グ)ビトイン アッアラウ

カイランパ マイ ディ マグディディリム

ニャカイランパ マイ ディマ(グ) ディーディリム

ルパナング アラウ ナング ルア?ハティ パグシンタ

ルパナン(グ) アーラウ ナン(グ)ルワ ハティ パグシンタ

ブハイ アイ ランニット サピーリング モ

ブハイ アイ ランギット サー ピーリング モー

アミング リガヤ ナパグ マイ マンア?ピィ

アミン(グ) リーガーヤ ナーパグ マーイ マンアピ

アン ママタイ ナング ダヒル サヨ

ア ママターイ ナン(グ) ダーヒル サイヨー

国歌に関するリンク

【NHCP “That Other National Anthem”】
https://nhcp.gov.ph/that-other-national-anthem/

【駐オーストラリア大使館 “The Philippine National Anthem”】
https://www.philembassy.org.au/the-philippines/national-anthem

【Official Gazette “THE CONSTITUTION OF THE REPUBLIC OF THE PHILIPPINES”】
https://www.officialgazette.gov.ph/constitutions/1987-constitution/

【Official Gazette “Act No. 1696, s. 1907”】
https://www.officialgazette.gov.ph/1907/08/23/act-no-1696-s-1907/#:~:text=Act%20No.%201696%2C%20s.%201907%20No%201696.%E2%80%94An%20Act,and%20for%20other%20purposes.%20Source%3A%20Supreme%20Court%20Library

【Official Gazette “Commonwealth Act No. 382”】
https://www.officialgazette.gov.ph/1938/09/05/commonwealth-act-no-382/

【Official Gazette “Executive Order No. 4, s. 1943”】
https://www.officialgazette.gov.ph/1943/10/23/executive-order-no-4-s-1943/

【Official Gazette “Executive Order No. 321, s. 1950”】
https://www.officialgazette.gov.ph/1950/06/12/executive-order-no-321-s-1950/

【Official Gazette “Executive Order No. 137, s. 1965”】
https://www.officialgazette.gov.ph/1965/01/07/executive-order-no-137-s-1965/

【Official Gazette “Republic Act No. 7805”】
https://www.officialgazette.gov.ph/1994/09/01/republic-act-no-7805/

【Official Gazette “Proclamation No. 1239, s. 1998”】
https://www.officialgazette.gov.ph/1998/06/04/proclamation-no-1239-s-1998/

【Official Gazette “Republic Act No. 8491”】
https://www.officialgazette.gov.ph/1998/02/12/republic-act-no-8491/

【Filipinas Heritage Library “THE PHILIPPINE NATIONAL ANTHEM”】
https://www.filipinaslibrary.org.ph/himig/the-philippine-national-anthem/

【Filipinas Heritage Library “FEATURED ARTIST: JULIAN FELIPE”】
https://www.filipinaslibrary.org.ph/himig/featured-artist-julian-felipe/

【National Commission for Culture & the Arts “Jose Palma”】
https://philippineculturaleducation.com.ph/palma-jose/

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