東京オリンピックで国歌演奏ミス!?香港でブーイングが起こった中国国歌演奏問題を検証

オリンピック表彰台で流れるべきは香港国歌?

7月27日、東京五輪・フェンシング男子で1997年の香港返還以降で初めて香港が金メダルを獲得した。当然のことながら香港市民は盛り上がったわけだが、それは表彰式まで。現在ネットで出回っている動画は、香港のショッピングモールで撮影されたもの。表彰式で香港旗が揚げられる中、中国国歌『義勇軍進行曲』が流れたことに人々が「We are Hong Kong(私たちは香港)」とシュプレヒコールをしているのが分かる。

(動画:朝日新聞社)

中には、2019年の抗議運動で誕生した『香港に栄光あれ』が国歌だという声もあったという。

2019年9月、サッカーの国際試合 香港対イランの際には、中国国歌にブーイングをする一方、この『香港に栄光あれ』が歌われ大きな話題になった。

香港が金メダルを獲得したことは過去にも

実は香港が、オリンピックで金メダルを獲得したのは今回が初めてではない。香港チームとして金メダルを獲得したのは2度目。1996年のアトランタ五輪・セーリングで李 麗珊が金メダルを獲得している。

この時の動画を見ると、当時返還前だったためイギリス国歌『GOD SAVE THE QUEEN』が演奏されているのがわかる。

オリンピック憲章では”派遣団の歌”

オリンピック憲章では表彰式について以下のように定めている。

規則70.表彰式・メダルと賞状の授与
1表彰式
1-1優勝者の所属する派遣団の歌が演奏される間は、メダル受賞者たちは旗の方向を向いていなければならない。(一部省略)

上記で分かるように、流される曲は国歌である必要はない。曲は各国のオリンピック委員会が国際オリンピック委員会に認められたものとなる。
例えば、今回の東京五輪ではロシアがドーピング問題で国歌が流すことが出来ないため、『ピアノ協奏曲第1番』が表彰式では流されている。実は、この曲に決まる前にはソ連時代に誕生した『カチューシャ』を代替歌として提案したがスポーツ仲裁裁判所(元々は国際オリンピック委員会の組織で現在は独立機関)が「ロシアに関するあらゆる賛歌を禁止している」ことを理由に却下している。

オリンピック表彰台で流される曲は国歌か地域賛歌か

結論を言えば、JOCが中国国歌を流したことは間違いではない。香港のオリンピック委員会の正式名称は『Sports Federation & Olympic Committee of Hong Kong, China』であり、現在の香港の政治状況を考えれば中国国歌が流されるのは仕方がないことだろう。そもそも香港には正式な賛歌が存在しない。

賛歌といえば、今回の東京五輪で面白い出来事があった。トライアスロンで優勝したバミューダ諸島だ。ここはイギリスの海外領土であり、正式な国歌はイギリスと同じ『GOD SAVE THE QUEEN』になる。しかし実際は・・・

 

当然、表彰式で流れたのは『GOD SAVE THE QUEEN』なのだが、演奏が始まると優勝者のFlora Duffyは銀メダリストのイギリス選手を見て何やら伝えたいようにも見える。日本語のアナウンスを聞くと「バミューダ国歌の演奏です」と言っている。しかし、フランス語では「Hymne Bermudes」と言っているのだ。“Hymne”“賛歌”の意味で“国歌”の意味はない。そのため『Hail to Bermuda』が流れないと不思議に感じたのだろう。

このように国歌と地域歌の区別は大切な問題だ。書籍やウェブサイトで国歌として紹介されているものが地域歌であることが少なくない。バミューダの事例のように“賛歌”と紹介して“国歌”が流れたら、その地域の人たちが違和感を覚えるのは当然のことだろう。気をつけたいところだ。

とは言っても今の所、国歌に関しては大きなミスがない東京オリンピック。このままかけ間違いなく無事に終わって欲しい!