今年を“国歌”で振り返る 2016
「今年もありがとうございました。良い年をお迎えください」
こんな言葉を繰り返す年末。テレビやラジオでは、2016年を時事ネタや芸能ニュースで振り返る番組が多いですね。そこで、国歌の輪プロジェクトでは“国歌”に関する出来事を紹介しながら2016年を振り返ります!
国歌が最も流れるオリンピック ~リオ五輪~
様々な国歌を聞く事が出来るのがスポーツイベント。特にオリンピックは様々な歌を聞けるだけではなく、歌い手の想いを感じることが出来ます。8月にブラジルで行われたリオ五輪も例に漏れることなく国歌の魅力を教えてくれました。特に、柔道女子52キロ級の金メダリスト、コソボのマイリンダ・ケルメンディ選手のメダル授与式での国歌演奏シーンは感慨深いものがありました。コソボは未だに国際的に独立国として認められていない国です。オリンピック委員会ではコソボが出場することが認められず、前回のロンドン五輪ではアルメニア代表として出場したケルメンディ選手。しかし今回のリオ五輪からコソボとして選手団出場が認められたため、彼女は初めてオリンピックで母国の代表としての出場したのでした。そのため彼女が金メダルと勝ち取り国歌を聞きながら涙を流している姿は母国に対する想いが感じられ感慨深いものがありました。
【シリーズ】リオ五輪を振り返る 国歌で ~⑦歌わないんじゃなくて 歌えない国歌たち~
国歌斉唱・起立 義務化問題
今年に限らず毎年日本において、いつも問題になることです。7月のリオ五輪壮行会では森元首相が「国歌歌えない選手は日本代表ではない」と発言し問題に。森さんの失言癖は絶好調です。東京五輪まで目が離せません。
このような“義務化問題”は他国でもありました。11月、インド最高裁は国内の全映画館に対し、映画上映前に国歌「ジャナ・ガナ・マナ」の演奏と国旗の映像を流すことを義務付ける判決を出しました。早速逮捕者が出たり、起立しなかった人を集団リンチする問題が発生しています。寛容さが失われているように思えてなりません。
しかし、このような風潮に真っ向から対立したことで話題になった事もありました。同じ11月、イギリスの国営放送BBCが国会議員から、番組終了時に国歌「God Save the Queen」を流すよう求められたことに対し、セックス・ピストルズの同名の曲を流すということがありました。ユーモアのある対応が話題に。こういった事が出来る社会は健全だと思います。
「不謹慎だ」
ではなく
「(国歌の義務化に反対)そういった考えもある」
と言える社会であってほしいと思います。
世界で横行する排他主義
アメリカのドナルド・トランプ氏の大統領選挙勝利をはじめ、フランスやドイツ、イタリア、南アフリカなどいくつかの国で排他主義的な主張をする政党が支持率を伸ばしています。一方でマイノリティを大事にする動きが国歌では見られました。7月、カナダ下院が、トルドー首相率いる自由党政府が推進する性的平等に向けた取り組みとして、国歌の歌詞変更を可決しました。
問題の部分は”sons”。
以前から
「男性だけに言及されているのは国歌の歌詞としてふさわしいのか」
と言われてきました。
現代の男女平等という風潮が顕著に表れた出来事と言えます。今回の法案では“sons”を“our”にすることが明記され、東京五輪では新しい国歌が聞ける事でしょう。
またスリランカでは同国で2月に行われた独立記念日の祈念式典で少数派のタミル人の言葉であるタミル語で国歌が歌われました。憲法では多数派を占めるシンハラ人が使うシンハラ語で国歌を歌うことが定められています。そんな中で流されたタミル語での国歌斉唱はどんな意味があるのでしょうか?スリランカでは長く内戦が続きました。多数派のシンハラ人とタミル人の争いです。そんな歴史を考えると今回の出来事は遅すぎる・・・
でも脚気的な出来事であり双方の和解に向けまた一つ前進した象徴的な出来事と言えます。まだ憲法が改正されていないためタミル語ヴァージョンが公式に認められたわけではないですが、公式行事の場で歌われたことは大きな前進です。今後憲法でもタミル語国歌が認められることを切に願います。
対立と調和が入り混じった国歌の2016年
いかがでしたか?
話題にはなりにくいですが、2016年も国歌は大きく動きました。こうしてみると社会の問題が国歌に大きな影響を与えていることが分かります。来年どんなことが起こるのか今から楽しみ^^
国歌を追いかければ今の世界が見えてくる!?
来年も国歌の輪プロジェクトをよろしくお願いいたします!