”モノ” ”ヒト” ”チエ・ワザ”で国際理解教育を支援 『桜美林草の根国際理解教育支援プロジェクト』
無料で世界各地の民族衣装や楽器などを貸出しているプロジェクトがあることをご存知ですか?
”無料”という言葉に弱い筆者。情報を聞きつけ、そのプロジェクトがある桜美林大学に行ってきました。
地域との交流を大切にする桜美林大学
駅前からスクールバスが出ていてキャンパスまで行けます。
7~8分でしょうか。大学に着いて、まず目に留まるのが
「ようこそ!」の文字。
敷地内を歩いていると、「犬の糞はお持ち帰りください」の看板があったり、
散歩している人が休めるようなベンチのある広場があったりと、とてもオープン。
「関係者以外の立ち入りを禁ずる」の看板を置く大学が多い中、珍しいです。
そんな自由な空気感のある学内を散策。
近代的な教会があったり、レバノン杉があったりと見ごたえあります^^
コレクションは2000点以上
さて、今回伺ったのは桜美林大学の其中館(きちゅうかん)内に本部を持つ
桜美林草の根国際理解教育支援プロジェクト
(以下、”草の根プロジェクト”)
今回、お話を伺ったのはプロジェクトのエデュケーターの岩本さんと清水さん。
エデュケーターとは博物館や美術館において教育や普及活動を行う専門家のことです。
まず部屋に入って思ったのは「物が沢山ある・・・」ということ。
―岩本さん、コレクションは何点ぐらいあるんですか?―
2500点、およそ70の国と地域のものを所有しています。
この部屋だけでは入りきらないので別室に保管しているんです。
―これだけの物を集めるのは大変ですよね―
そうですね。
私たちが旅行に行った時には常に探していますし、国内でも骨董市とかに行ったりもしますよ。
あと、学生や留学生、学内の先生が旅行や調査などで海外に行って
「面白いものあったよ」と寄付してくれたりもします。
―一般の人に無料で貸出していると聞いたのですが本当ですか?―
本当です^^
貸出しと返却は直接こちらに来ていただくのが条件なんですが。
私たちが持つコレクションを地域に活かしたいということで無料で貸出しをしています。
”モノ”を触って気づきを得る
「ちょっと触ってみませんか?」
岩本さんが持ってきたのは”ガシン”と呼ばれるインドネシアのコマ。
「これ、どうやって回すと思います?」
同席していた大学広報の方と一緒に考えます。
日本と同様、膨らんでいる部分の下に紐を巻きつけて・・・
回せないのはもちろんですが、棒が余ります。棒を活かすにはどうしたら・・・
悪戦苦闘している2人を岩本さんと清水さんはニコニコ見守っています。
「ヒントは棒に紐を通します」とアドバイス。
更に分かりません。
投げ方は日本と同じか尋ねると
「その考えは捨ててください(笑)」と岩本さん。
5分後
「そろそろ時間もあれなんで、正解はですね・・・」
と教えてくれた巻き方がコチラ。
日本のコマと違って、下部に紐は通しません。
実際に回してもらいました。
「日本のように横投げではないんです」
床にコマの下部分をつけて紐を手前に一気に引きます。
フォーーーー
機関車の汽笛のような音が鳴ります。
なるほど!
分かると とっても面白い^^
ブスッとした顔で見学に来た学生もこれやると自然と表情が柔らいで、
他の人と仲良くなるんだとか。
確かに、広報の方との距離が縮まった気がします!(一方的に!)
いかに自分が固定概念に縛られているかということにも気づかされます。
コマだから横投げだろうという考えが邪魔をして、正解に辿りつけませんでした。
「普通は先生がやり方を教えちゃうんですね。でも、自分で考えてやると興味を持てますよね? 」
と清水さん。
確かに!これは印象に残ります。常識だと思っていたものが覆されるというのも面白い。
「それも狙いですね。世界には色々な物があるという事を考えてもらって、気づいてもらう。
そうすることで考え方の幅が広がると思うんですよね。インターネットや人から話を聞くだけでは出来ません。
体験をしないと”本当の”気づきにはならないですね。」
提供するのは”モノ”だけじゃない!
―清水さん、体験すると凄くインドネシアのコマについて印象に残りますね!―
ここにあるものは全て体験できるものなんです。楽器だったら音を出す、服なら着てみるとか。
これらを展示して見せるだけではなくて、どうしたら興味を持ってもらえるか、
どうやって使ったら効果的に学習活動に活かせるかを考えているんです。
単純に貸出すだけが私たちの活動ではないんですよ。
こういった物を使った出張授業も無料で行っているんです。
場所によっては交通費とか食事代とかをご負担いただく場合もありますけどね。
―授業もやってくれるんですか!?―
はい。プロジェクトって名前が付いているんですけど、一つの博物館なんですよ。
これだけ物があるし、ここにいる岩本のように学芸員の資格をもった職員がいて、コレクションを活かす技術が蓄えてあるので、
博物館がアウトリーチしているという風に考えていただけたらと思います。
―物を貸し出しているだけじゃなくて留学生の訪問交流もしていますね―
国の紹介をしてほしいなどの依頼を受けてやっています。
これもただ彼らを送り出すだけじゃなくて、私たちも加わって留学生と事前にプログラムを作り、訪問交流にも参加します。
留学生に話してもらって、あとはその場にいるだけでいいというものがあったりするんですよ。
でも私たちは留学生にただ出身国について語ってもらうのではなくて、クイズ形式にしたり、アクティビティをしたり工夫するんです。
参加者が興味を持つようなことを考えるのが大変なんですが・・・
テクニックがあるんです^^
―仕掛ける側も勉強になりますね―
クイズもそうですが「どうやったら効果的に自分の国を紹介できるだろう」と考えることで留学生にもメリットがあります。
あと、何人かでチームを組んでやるんですが、それぞれ国籍も所属も日本語のレベルも違います。
そんな人たちがチームになってやるんですね。
元々知らない、関わりの無い学生同士が集まるわけですから、お互いに学ぶことが多いと思います。
草の根プロジェクトの特徴は”チエ・ワザ”にあり!
―岩本さん、プロジェクトの活動は物を貸すだけではないってことですね―
大事なのは物や留学生、実物をどう活かすかだと思うんです。
留学生はどこの大学にもいます。コレクションもそれぞれの大学に大切な物があります。
では、それを最大限に生かすにはどうしたらいいのか。その”チエ”と”ワザ”を持っているのが草の根プロジェクトの大きな長所です。
―取材前まで物の貸出しがメインの活動だと思っていました^^;―
一番は地域で行われている国際理解教育の支援です。
現場だけだと限界があって、国際理解に関心がある人がいて工夫してやっていても、
実物がなければできないこと、留学生が行って関わらなくては分からないことってあるんですよね。
その足りない部分を我々が提供して、物や人に関わりながら学ぶということを実現させています。
また関わった学生も学ぶことがあります。
寮と大学とバイト先だけの往復になりがちな学生も、日本の教育現場に関わることはないので、
こういう活動に参加することで大きな学びを得るんですね。
お互いが学んでいるんですよ。
桜美林大学の『草の根国際理解教育支援プロジェクト』は”モノ”や”ヒト” だけでなく、
これらをどうやって効果的に国際理解に活かすかという”チエ・ワザ”を提供していました。
ただ話を聞くだけではなく、体感することで国際理解を進めるというプロジェクトに共感。
こういった活動がもっと広がってほしいと思います。
貸出しや出張授業の相談は随時行っているそうなので、お問い合わせの上、行ってみてはいかがですか?
沢山の発見が得られると思いますよ!
お問い合わせ先
【桜美林草の根国際理解教育支援プロジェクト】
<住所>東京都町田市常盤町3758 桜美林大学 其中館(きちゅうかん)301室
<TEL>042-797-2745
<E-mail>kusanone@obirin.ac.jp
<受付時間>月~金曜(祝日は除く)13:00~17:00
*不定期で休業する場合もあり
<HP>http://www2.obirin.ac.jp/kusanone/kusanone.html
【桜美林大学について詳しく知りたい方はコチラ】
桜美林大学