BBCが示した国歌と愛国心の関係

11月5日、イギリスのBBCが国会議員の「女王陛下万歳(イギリス国歌)を放送終了後に流せ」という要求にユーモアを交えて返答したことが話題になっています。

 

BBCに国会議員が『女王陛下万歳』を流せと要求

「BBC は、英国の一員であることを恥じるべきではないし、BBC One が 1日に1度国歌を流すことは難しくないはずだ」

「かつてはそうして国歌が流れていたし、今こそEU離脱と女王の90歳を祝うために復活させるべきだ」

こう話したのは保守党アンドリュー・ロージンデル議員。

EU離脱に賛成した政治家のひとりでもあります。

確かに彼が言うようにBBCは1997年まで国歌を毎日の放送終了時に放送していました。

 

ちなみに“BBC One”とは、日本で言うところのNHK「総合テレビ」に当たります。

そんな要求にBBCは

「すでに適切なときに国歌を流している」

「女王のクリスマススピーチの放送時などに国歌を流している」

としてロージンデル氏の要求を却下しました

 

要求通りBBCで流れた『女王陛下万歳』・・・ただしセックスピストルズの

しかしこれで終わらなかったのがBBCのすごいところ。

なんとロージンデル議員の要求に変化球で応えたのです。

応えたのは“BBC Two”の番組『BBC Newsnight』。

番組終了時に司会者がこう言います。

 

「私たちは BBC One ではありませんし、放送終了前でもありませんが、喜んで彼の要求に応えましょう。おやすみなさい」

 

そこで流れたのが国歌ではなく、セックスピストルズが歌う『女王陛下万歳』でした。

 

ちなみにどんな歌詞なのかというと

 

神よ 女王様を救い給え
あの女は 人間じゃない
英国の夢には 未来は無いんだ

おまえが欲しいものは 言うんじゃねえ
ここには 未来は無いんだ
おまえに未来は 無いんだ

 

と結構過激です。

セックスピストルズは1977年のエリザベス女王在位25周年祝典の際、テムズ川のボートでゲリラライヴを行い、この曲を歌ました。

彼らはこの曲を歌ったことで逮捕され、BBCでは日中での放送禁止措置を取られてしまいます。

そんな曲を流したBBCはマスコミの意地を見せたと言えるでしょう。

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日本なら確実にアウトなジャケット

 

当然ながらロージンデン議員は怒っているようです。

彼はツイッターで

「驚いてはいないが、いかに多くの “EU残留派&文句ばかりを言う人々” が国歌をバカにしているかに落胆した」

とツイートしています。

もちろん世間の反響もすごいもので、

この対応にBBC Newsnightの公式ツイッターアカウントもツイートし、

2日で1万以上のリツイートがありました。

BBCはイギリスの国営放送ですが中立性を大切にしています。

イギリスの首相だったサッチャーがBBCの放送内容について「お願い」と称し、

報道内容にクレームを付け変更させようとしたことがありました。

その際BBCは「サッチャー首相がBBCについて、この様に申し上げました」

とサッチャーのクレーム内容全てを番組内で暴露し放送しました。

 

愛国心ってなんだ

イギリス人は愛国心の強い国民だと思っています

旅行先で出会うイギリス人は国旗をあしらったグッズを身につけている事が多いし

自国に誇りを持っている事が多いからです。

そういった気持を持ちつつ、国の体制に批判的であったりする人もいて自身の主張をしっかり持っていたりする。

例えば、パレスチナで会ったイギリス人女性はイギリス王室に対して批判的でした。

筆者が国歌を歌ってほしいとお願いをすると嫌々歌ってくれた。

なぜそんなに嫌そうに歌うのか尋ねると

「私はあの税金泥棒たちが嫌いよ」

と答えてくれた。

イギリス国歌は王室が末永く続きますようにという趣旨の内容。

そんな歌詞だから嫌々歌ったのです。

でも彼女は母国であるイギリスが好きでした。

 

愛国心がある=国歌を歌う

国歌を歌わない=愛国心が無い

 

ではない!

 

国歌は強制されるものではないのではない。

権力から歌う事を強制される事に嫌悪感を持つ人も多いと思います。

筆者は日本が大好きです。

日本の文化は優れています。

日本の自然はとても美しい。

日本人は素晴らしい国民です。

だからって国歌を歌う事を強制されることに違和感があります。

 

「国歌を歌わないやつは非国民だ」

「国歌を歌う事は義務だ」

「国歌を歌わないやつは日本から出ていけ」

 

BBCは国歌を強制することへの違和感を示しました。

国歌とは本来、国を愛し内から自発的に歌う物だと思うのです。

 

最後に、セックス・ピストルズのリード・ヴォーカルを務めたジョン・ライドンの

『女王陛下万歳』についてのコメントを御紹介します。

 

俺よりも優れてると俺に言おうとする奴らの考え方を憎悪する。

俺は抑圧されるのが大嫌いだ。

誤った、間違った考え方のパターンは憎悪するが、

俺はそうした考えを持つ個人を憎むわけではない。

女王だって嫌いじゃない。

俺は彼女が象徴する権威が嫌いなんだ。