誰かに語りたくなる “唯一無二” 国歌たち

“唯一”という言葉はとても惹かれるものがある。今回は孤高の存在である唯一●●な国歌をご紹介!

 

南米で“唯一”英語国歌
ガイアナ共和国『親愛なるガイアナの土地』

ということは南米で唯一英語が公用語の国でもある。もともとはオランダ領だったが、1814年にイギリス領となり66年に英連邦の所属国として独立した影響が国歌にも表れている。複雑な民族対立問題を抱える同国の歌詞には団結への強い思いを感じることが出来る。

~第3節~

「偉大なるガイアナの地 我らの血筋は違えど」

「6つの民の1つの国 団結と自由」

 

 

世界で“唯一”元ラブソング国歌
マレーシア国歌『私の国』

なぜラブソングが国歌になっているのか。まず『私の国』は現在でも存在する9つの州の1つ、ペラ州の州歌にすぎなかった。1957年、イギリスからの独立を目前にし国歌を決めるとなった際、国歌を公募をすることになった。しかし500以上あつまったものの選定委員会の納得いくものはゼロ。そこで既存の州歌から選ぶことになり、選ばれたのがペラ州のものだった。

ではなぜペラ州がラブソングを州歌として使っていたのか。

1901年、ペラ州の首長(マレーシアでは各州に首長がいる)がイギリスに訪問した際、イギリス側から

「首長をもてなす際にアンセムを流したいが、あなたの州にアンセムはあるか」

と尋ねられたもののペラ州にはアンセムなど存在しなかった。そこで音楽家でもあった側近が思い付きで歌ったのが当時マレーシアなどで知られていたラブソング「トラン・ブーラン」のメロディだった。

この「トラン・ブーラン」を更に遡ればフランスのシャンソンへの辿り着く。ラブソングはこうして州歌へ、そして国歌となっていったわけだが国歌が元ラブソングという事に対してマレーシアが気にしていないわけではない。1957年、政府は「トラン・ブーラン」を歌う事を禁止しており、日本でも民放連がマレーシアへの配慮から要注意歌謡曲として同曲を指定している。

 

唯一 歌詞・メロディが全く同じ
ギリシャ共和国・キプロス共和国『自由への賛歌』

 

動画は2017年10月にキプロスで行われた2018 FIFAワールドカップロシア大会予選、ギリシャVSキプロス戦の様子。全く同じ国歌など国歌は一回のみ流れ終わっている。メロディが一緒という国歌はいくつかあるが歌詞共に同じという国歌は唯一だろう(2つの国歌を持つニュージーランドをのぞいて)。

なぜ両国国歌は全く同じ歌を採用しているのか。

実は第二次世界大戦後のキプロスでは多数派のギリシャ系住民がギリシャへの併合を求めていた。これにトルコ系住民が反発し国内は混乱。

ギリシャ、トルコが介入したことをきっかけにイギリスが仲介し独立という流れを作る。そもそもは統治していたイギリスが双方の分断をしながら都合よく動かしていたのが問題だった。この時行政府の長である大統領をギリシャ系、行政権限を分掌し拒否権を持つ副大統領をトルコ系から選出すると決めたりと共存する方向で進み始める。そう、国民の多くはギリシャ併合を望んでいた者の大国の意向で無理やり独立させられたという見方も出来る。もちろんトルコ系住民もいるため話は簡単ではないが。

国歌はそんな混乱の中統一曲が決められず現在の『自由への賛歌』に落ち着く。

しかし1983年、トルコ系住民が多いキプロスの北側が「北キプロス・トルコ共和国」として独立を宣言。北キプロス・トルコ共和国は国歌をとること同じ国歌「独立行進曲」を定めた。

キプロス国歌は他国の意向に左右され生まれた国歌といえる。