過激すぎる! ”愛” ”憎” が込められたヤバい国歌たち

国歌には様々な想いが込められているだけにベクトルが振り切ってしまう歌があります。

今回はそんな想いが前面に出てしまったが故に誕生した“ヤバい”国歌たちをご紹介。

日本語歌詞は悠書社が出版している『世界の国歌総覧』を基に掲載します。

 

歌詞が過激で“ヤバい”

フランス共和国『ラ・マルセイエーズ』は世界で最も過激な歌詞を持つ国歌でしょう。

「聞け、戦場の咆哮を 野蛮な敵のその叫び 我が陣めがけてまっしぐら 妻子ののどをかき切らんと襲い来る」

「進め 進め 我らの土地に穢れた血の雨を降らせよう」

“のどをかき切る”とはかなり過激。フランスでは幼い子がこれを歌う事は問題ではという議論があるほどです。

 

北アフリカのアルジェリア民主人民共和国『誓い』も過激な言葉が並びます。

「死ぬのだ、アルジェリアを生かすために 身をもって示せ 示せ 示せ」

「火薬の破裂音をリズムとし、マシンガンの発射音をメロディに」

前奏部分がミッキーマウスマーチに似ているとも言われるこの国歌ですが“マシンガンの発射音をメロディに”と聞くとと大分毛色が違いますね。

ここで間違えてはいけないのはどちらの国も過激な歌ですが決してその国が“好戦的”という事ではありません。

この勘違いの怖さを実感したのは2015年11月に起こったパリの同時多発テロが発生した際にされた日本での報道の仕方でした。

日本語歌詞を表示しながら爆弾テロが起こったスタジアムから国歌を歌いながらフランスの人たちが避難したというニュース。映像を流したのちコメンテーターの「報復をフランスは考える可能性がある」という発言はインパクトがありました。見る人によっては過激な国歌を歌う事は“フランス人が報復を求めている”と印象つけるような作りだったのです。しかしこのような報道の仕方はフランスの人々からしたら不本意でしょう。彼らは報復ではなく“連帯” “団結”を求めて歌ったのです。

アルジェリアも一緒です。現駐日大使は国歌について「歌っていると涙が出そうになります」と言っています。大使の子供時代は独立戦争の真っ最中でした。戦闘に参加できない代わりに物資の運送を手伝ったりしていたそうです。歌っていると当時のことを思い出しこみあげ作るものがあると言っていました。

歌詞が過激なのは独立に多くの犠牲があったことを忘れないためです。また、その独立に対して強い誇りを持っているのです。歌詞が過激だからという表面的な事ではなく、その裏にあるその国の歴史やメッセージを読み解くことが国歌を聞く上で大事なポイントになるのです。

 

 

愛国心がありすぎて“ヤバい”

「どんだけ祖国を愛してるんだよ」と言いたくなる国歌もあります。

アゼルバイジャン共和国『アゼルバイジャン国歌』は自国を擬人化することで、国への愛情を前面に表現しています。

「お前(祖国)のために命を捨てる用意があるぞ お前のために血を流す覚悟はあるぞ」

「お前は栄える」

「お前への愛は千と一回 心に深く埋め込まれている」

こんな告白をする男がいたら引くぐらい愛情満載。ちょっとストーカー気質さえ感じさせますね。

これだけ愛情を表現するのは同国の不遇の歴史が関係しています。

1918年にアゼルバイジャン民主共和国を立ち上げたもののイギリス軍に占領されてしまいます。その後すぐにソ連軍が首都に進攻しソビエト政権が樹立。1922年にはザカフカース社会主義連邦ソビエト共和国の一部になり、その後同連邦の解体により直接ソビエト連邦の一部になったりと大国に翻弄されなかなか自国を独立させることができません。

アゼルバイジャン共和国になったのは1991年と長い月日を経て国歌が誕生しました。そんな歴史を持っているからこそ深い愛を感じる国歌が誕生したと言えます。

歴史を強く感じると言えば自由への執着が“ヤバい”のがウルグアイ東方共和国です。

国の標語は[Libertad o Muerte(自由か死か)]。これは国歌『ウルグアイの国歌』にも表れています。

「自由か、さもなくば栄誉の死か」

「戦いの中我らは自由を求めて叫ぶ 死につつつもなお叫ぶ 自由を 自由を」

自由の大切さを前面に出した内容で、死よりも自由が大事という日本人には理解しがたいものです。これも自由を求めたウルグアイの歴史が大きく関係しています。

 

 

敵対心が“ヤバい”

スコットランドは長年イングランドと対立してきました。最近もスコットランドでは独立の是非を問う国民投票が行われ独立反対が勝ったものの僅差。今でも独立機運がくすぶっている程です。

国歌『スコットランドの花』は非公式の歌ながら様々なイベントで歌われ事実上の国歌となっています。

「エドワード軍に抵抗し、誇り高い王を本国へ退け 侵略を断念させたスコットランド」

エドワードとは、スコットランドにイングランドが侵攻した際のイングランド側の指導者であるエドワード家のこと。武の才があったエドワード1世の侵攻はスコットランドを窮地に追いやりますが、戦いの最中に急死。息子のエドワード2世が後を継ぎます。

国歌のタイトル『スコットランドの花』とはアザミのことで、圧倒的に不利だったスコットランド軍に夜襲をかけようとしたエドワード2世でしたが、アザミのとげを踏んだイングランド兵士が声をあげたことで夜襲が失敗。このとげがスコットランドに勝利をもたらしたという事で、現在のスコットランド国花はアザミです。

国歌からは圧倒的に不利だったにもかかわらずイングランド軍に勝ったスコットランド人の誇りを強く感じる事が出来る内容です。

パラグアイ共和国『パラグアイ人達よ、共和国か死か』も歴史を強く感じることが出来、歌詞からは独立時に戦った相手の事が書かれています。

「王の圧政300年 虐げられしパラグアイ人 怒りを胸に立ち上がり 「もう結構」と打倒せり」

「王の冠打ち砕き 勝利の帽子をかかげたり」

スペイン王の冠をぶっ壊して、もう結構って言ってやりますよ!

といった感じですね。

歌詞の内容は1500年代前半から1810年の独立宣言までの長きにわたるスペイン(王)の支配とそれに立ち向かったパラグアイの人々の歴史です。メロディも徐々に盛り上がりを見せる構成がよりこの歌をドラマティックにしています。

 

 

ヤバい国歌はカッコイイ? それとも過激?

今回紹介したヤバい国歌の中には国歌として相応しい内容かという議論があるものがあります。過激な内容は教育に良くないだとか、制作当時は敵対関係であったにしろ今はそうでない場合、その国のことを“倒す”といった趣旨の歌を国歌として定めていいのかなどなど。

様々な意見はあると思いますが間違った飲酒を与えることは避けたいところです。

多くの歌い手は内容をストレートに伝えたくて国歌を歌いません。愛国心を表現することや一体感を求めて歌うのです。そこさえ勘違いしなければ国歌がもっと愛しい歌になりますよ!