カナダが国歌の歴史を動かした! 男女平等を訴え歌詞変更

今月1日、国歌史上画期的な法案がカナダの上院議会で可決されました。内容はカナダ国歌“おぉ カナダ”の歌詞の一部を変更するというものです。

過去、国歌は様々な理由で変更がされてきました。国の支配者が変わったり、政治体制が変わったり、統治者の都合だったり・・・

今回、国歌史上初めて“ジェンダーの不平等”を理由に歌詞が変更されました。

国歌は歴史を表すと言ってきましたが、今回の動きは国際的に言われてきた男女平等が国歌まで到達したことを意味します。

 

何が問題?カナダ国歌“おぉ カナダ”

変更されるのは「True patriot love in all thy sons command(汝の息子すべてに流れる真の愛国心)」の後半、『in all thy sons command』という部分。

今回これを『in all of us command』に変更するという法案でした。ちなみにカナダ国歌はフランス語版がありますが、こちらは異なる歌詞が使用されているため変更はありません。

本当に些細な部分で“thy sons”“us”になるのですが何が問題だったのでしょうか?

“sons”というのが男性しか指しておらず、女性が含まれていないという意見が以前からありました。特にオリンピックが開催されると、金メダルを獲得した女性が「全ての“息子”が持つ愛国心」と歌います。そこに違和感を持つわけです。

 

変更までの長い道のり

“おぉ カナダ”は1908年、詩人であり裁判官でもあったロバート・スタンリー・ウィアーが、すでにあったフランス語版の歌詞を英訳(と言ってもほとんど彼の創作的内容)した物がベースになっています。当時の歌詞を見ると

「“Thy” brow is crown’d with leaves of red and gold.」

となっており性別に言及していません。このことは変更推進派の主張の要になっています。

その後いくつかの英訳歌詞が出ますがどれもしっくりこず採用されませんでした。

しかし、第一次世界大戦の傷が癒えぬ1927年、わずかな変更が行われました。メロディはそのままに歌詞のみ変更。これが今の“おぉ カナダ”です。

1980年に国歌に制定されて以来、歌詞変更をめぐっての論争が始まりました。

制定から今まで12回ものジェンダーを中立にするための法案が提出されてきましたがことごとく保守勢力に拒まれます。当初、世論も変更には慎重で2013年の調査では65%が歌詞変更に反対していました。

しかし、時代の流れはジェンダー平等への動きが加速。カナダを代表する作家マーガレット・アトウッドやキム・キャンベル元首相が参加するグループがこの問題に取り組み始めます。

そして今回の変更のきっかけを作った人物の存在が大きかったと言えるでしょう。リベラル派の下院議員のモーリル・ベランジャー。彼は長年にわたってこの問題に取り組み議案を提出した人物でもあります。2015年にALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断され運動を加速。それに反比例し彼の体は徐々に動かなくなります。手押し車を使って議会に入り、発言時はタブレットを使って人工音声で行っていました。2016年ついに下院で歌詞変更に関する議案が可決。その時には車いすに乗って結果を見守りました。残念ながら彼は下院可決2ヵ月後にこの世を去ります。

下院通過した際、モーリル・ベランジャー下院議員は車いすに乗って参加した

 

カナダ議会は、下院で3回の審議を行った後上院に上げられるのですが、上院に提出されたものは慣例としてほぼほぼ通過します。しかし保守政党の強い反対にあい、法案の議論は18ヶ月停滞。しびれを切らした変更推進派は議論を打ち切り今回の投票を断行しました。

結果、賛成225、反対74と変更推進派が圧勝。

法案が成立するためにはカナダ総督の承認を得る必要がありますが、ここは問題なく承認を得ると言われています。

【動画】上院を通過した歴史的瞬間。国歌も歌われました

 

平昌五輪で新しい国歌が聞ける

今回の上院通過に多くの人がコメントを出しています。

賛成派のフランシス・ランキン上院議員は

「これは2つの言葉の変更は小さいかもしれません。しかしこれは大きなことです。今、法律が言語の面で私たちを支持したことを誇りにして歌います。これを起こしたグループに参加したことを誇りに思います」とコメント。

ジェンダー問題に積極的に取り組むトルドー首相はツイッターで

「男女平等へのもう一つの積極的な一歩」とツイートしました。

もっとも心に響くのは元パラリンピック車椅子競技の選手で14個の金メダルを受賞したケベック州のシャンタル・プティクレク上院議員のコメントでしょう。

「私は何度も表彰台に上がる特権を持っていたが、私たち全員が“わたしたちに流れる真の愛国心”と歌う機会はなかった。 彼ら(平昌五輪参加選手)が表彰台に立っている時の想いを想像する。それは素晴らしい瞬間です」
平昌冬季五輪に向かうカナダ代表選手たちが新しいバージョンで祝うことに嫉妬しているとも語っています。

実はフランス語バージョンにも疑問を持つ人がいます。それは歌詞に“十字架”などキリスト教を思わせる内容があるためです。今後こちらも変更の動きが出てくるかもしれません。今後もカナダ国歌には目が離せませんね!