架空国家が生み出す国歌たち【後篇】 ~アニメに登場する国歌を聞く~

前回、ゲーム内の架空国家の国歌をご紹介しました。

前回の記事はコチラ

架空国国歌ってまだまだあります。

後編はその一部、アニメに絞ってご紹介。

空想の世界に声や音を付けて命を吹き込むアニメにとって国歌は相性抜群。

国歌を入れることで、世界観をより重厚なものにします。

 

ネオ・ジオン国歌『我らが願い』 ~機動戦士ガンダム 逆襲のシャア~

地球に住む人類と、宇宙で生まれた人類が宇宙を舞台に戦争を繰り広げるという物語。

宇宙で生まれた人類が作ったネオ・ジオンという架空国家が出てくるのですが、

その国の国歌が本編中歌われます。

しかし調べてみると公式のタイトルというのが見当たらないし、歌詞も諸説あるようで曖昧。

 

星の光に思いをかけて 熱い銀河を胸に抱けば

夢はいつしかこの手に届く

Char’s believing ours pray pray(繰り返し)

 

上記が本編で流れる国歌と言われている歌の歌詞ですが、

筆者はこれが国歌だという意見に疑問を抱いています(本編中、この歌が国歌だという説明はされない)。

最後の行。”Char ”というのは主人公の宿敵シャア・アズナブルを指します。

ネオ・ジオンのリーダーでもあるため歌詞にその名が入っていてもおかしくないという意見もあるかもしれません。

しかし、ネオ・ジオンは前身の独裁的な国家体制を否定して作られた組織とのこと。

ならば、個人名を入れた歌が国歌になるという事は考えにくい。

ただ偽物という確証があるわけではありませんが、

国の成り立ちと歌詞を考えると国歌というのは間違いだというのが妥当でしょう。

ガンダムシリーズはスピンオフ作品が次々に出ているため

今後の作品ではっきりとした国歌が登場することを期待したい。

ネオジオンのシンボルマーク

ネオジオンのシンボルマーク

 

ガミラス国歌『永遠に讃えよ 我が光』 ~宇宙戦艦ヤマト~

こちらはオフィシャルに国歌とされている曲。

宇宙戦艦ヤマトに登場するガミラス帝国の国歌で、もちろん本編中にも流れます。

 

タイトルは” 永遠に讃えよ 我が光”

戦時中に作られた作品なのか、メロディも歌詞も雄々しい。

これを歌うとなると大変です。途中早口にならなくてはいけない所があったりと難易度が高い。

歌詞は以下の通り。2番まであります。

 

青き花咲く大地

気高きわが故郷よ

響け 歓喜の歌

神の加護は われらとともにあり続けん

ガーレ=ガミロン

讃えよ 祖国の勝利を

 

気高きは勝利の意志

示せ 遍く宇宙に

理想 貫く愛

神の加護は われらとともにあり続けん

ガーレ=フェゼロン

誇りある鋼の国家

 

 

これも設定があいまいで歌詞に出てくる”神”が何を指すのかファンでも分からないようです。

ちなみに歌詞に出てくる謎の単語、

「ガーレ=ガミロン」は”ガミラス万歳” 「ガーレ=フェゼロン」は”総統万歳”の意。

このように争いを描いた作品には架空国家が多く登場するため国歌も多い。

特に戦争を扱った作品は国歌を出しやすい様です。

その国の専制的な社会体制や、歌い手の強い愛国心を表現する際、効果的に働きます。

ただ、そういった作品ばかりかというと、そうでもありません。

 

ウメ星王国国歌『ウメ星国歌』 ~ウメ星デンカ~

”ドラえもん”の原作者藤子・F・不二雄と”笑ゥせぇるすまん”などの作者藤子不二雄Ⓐの合作。

ウメ星国の王室一家が故郷の星が爆発してしまい地球に逃れてきた所から始まるギャグ漫画です。

故郷の星が爆発しちゃうって、すごい設定ですよね^^;

下記のリンクは『小学一年生 1969年6月号』の付録としてついてきたソノシートの音データ。

CDにもなっていないそうでとても貴重です。

しかも殿下が直々に歌っていらっしゃる。

http://nicogame.info/watch/nm6323024

 

草津節のメロディで歌われます。

歌詞は以下の通り。コミック第一巻のカバーの裏に書かれた歌詞を掲載します。

 

ウメ星 よい星 みんなでおいで ドッコイショ

野にも山にもコリャ 花が咲くよ スッパスッパ

(いかめしく)

ウメ星 よい星 いちどくりゃ ドッコイショ

よそへいく気がコリャ しなくなるよ スッパスッパ

(重々しく)

ウメ星 ウメ星 パンパロパン

 

これは解釈が難しいところです。

国歌で意味の無い単語を使うというのはあまりありません。

” ドッコイショ”  ”コリャ” などは草津節のように音頭をとるためにあるのでしょうか。

極めつけが最後の

”パンパロパン”

どうやら決めゼリフのようで劇場版作品のタイトルにも使用されていますが詳細はよく分かりません。

メロディが草津節に似ていることから音楽文化は日本と似ていると思われます。

また、歌い方が細かく決められている所からは、国が国歌を重要視していることがうかがえます。

ブラジル国歌は演奏スピードなどが細かく憲法で決められており、大統領の許可が無ければ勝手なアレンジは許されません。

国歌がとても大事にされています。

しかし、”いかめしく”と”重々しく”の歌い分けがとても難しいと思っているのは筆者だけでしょうか^^;

こんな国歌を歌う人たちが故郷の星を失ってしまうのだから悲しみは計り知れません。

カバー裏に歌詞が書かれている

カバー裏に歌詞が書かれている

まだまだあるある架空国家の国歌

今日は3曲紹介しました。

共通点はどれも設定が曖昧という事。

そう考えると実在する国の国歌というのは一つ一つの言葉に意味があり無駄が無く凄いなと思います。

現実の国歌がいかに考えられち密に構成されているかが改めて分かりました。

架空国歌のよい所は既存概念に縛られない所でしょう。

ウメ星王国の国歌はその代表作と言えます。

それにしても架空国歌にワクワクしてしまうのはなぜなんでしょう。

その作品が好きな人物にとって国歌は作品を具現化する最良のツールだからではないでしょうか。

インターネット上にはネオジオン国歌?『我らが願い』をイベントで堂々と歌う人たちの様子がアップされています。

彼らはとても楽しそうで、その曲に誇りを持っているようにも映ります。

折を見て映画や現実にある架空国歌を紹介していきたいと思っています^^

 

架空国歌は

何と不思議で

何と魅力的で

何と曖昧で

愛らしいことか!

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