国際交流にユニバーサルデザイン・・・ 多文化共生に力を入れる新宿中央公園

JR新宿駅から徒歩10 分、都営地下鉄大江戸線の都庁前駅なら地上出てすぐの所にある新宿中央公園。

都庁などが立つ高層ビル群に囲まれた8.8ha の緑あふれる公園です。

国内では珍しい、多文化共生プロジェクトをテーマの一つにしています。

都庁も目の前

都庁も目の前

 

お話しを伺ったのは、新宿区から公園の管理を任されている一般財団法人公園財団

施設運営課長の落合美浩さん。

落合さんは北海道から九州まで、およそ10 か所の国営公園などを周っています。

まさに公園のプロ!

質問に対して丁寧に答えてくれる落合さん

質問に対して丁寧に答えてくれる落合さん

 

地域の特徴を活かす”多文化共生プロジェクト”

―新宿中央公園は多文化共生プロジェクトをテーマの一つに挙げているそうですね―

そうなんです。新宿という所は多くの外国人が住んでいます。

これは新宿中央公園の特徴で地方の公園ではあまり見られないことなんです。

公園の周辺に海外の方が、非常に多く集まる場所は他にはありません。

私たちは、日本人はもちろん、外国人の皆さんにも公園を使ってもらいたいと考えています。

そこで彼らにとって、もう少し使いやすいようにしたいという想いでプロジェクトを立ち上げました。

 

―具体的にはどんな事を?―

私たちが管理を任されたのは4 年前です。

それまでは草木が生い茂り、暗くて怖いというイメージがあり気軽に遊びに来れる雰囲気はありませんでした。

昼間でも暗かったんですよ。

そこで私たちは、なるべく植物の個体を減らさないよう木の枝の剪定をしたり、

花を植え明るくなるよう努めました。

今では日本人のほか多くの外国人の方が散歩に来てくれています。

季節の花を楽しむ事が出来、写真を撮る利用者も多い

季節の花を楽しむ事が出来、写真を撮る利用者も多い

利用者が自由に使えるランチスペース。花が飾られ清潔感がある

利用者が自由に使えるランチスペース。花が飾られ清潔感がある

 通路が広く、散歩やジョギングを楽しむ方も

通路が広く、散歩やジョギングを楽しむ方も

 

―ユニバーサルデザインにも力を入れていらっしゃるとか?―

ユニバーサルデザインと言うとバリアフリーと混同され、障害を持った方々を思い浮かべますが、

本来の意味は年齢や性別、文化などを含めた、差異を問わずに利用できるものを指します。

新宿中央公園では

日本語以外に英語、中国語、韓国語のパンフレット(地図)を用意しています。

今後は外国人の方から見て分かりにくい物をチェックしてもらい、それを反映していこうと計画中です。

 これなら外国人利用者も楽しめる

これなら外国人利用者も楽しめる

 

フットサルDE国際交流

―他に多文化共生プロジェクトはどんな事を?―

去年の4 月フットサル施設ができました。

ここを使った国際交流をしています。

 

―なぜフットサルコートを作ったんですか?他にも色々候補はあると思うのですが―

まずフットサル人口が増えていることが理由です。

新宿区には様々なスポーツ施設がありますがサッカー場・フットサル場があまりありません。

その需要を考えました。

あと、この公園の立地が理由でもあります。

フットサルコートのある場所は浄水場の屋上なんですね。なので建物が建てられないんです。

元々は多目的運動広場という名前のただの広場だったんですね。

さらにビルに囲まれているので公園の拡張は出来ません。この広さで作れるのがフットサルコートでした。

それにサッカーは世界的に知られたスポーツで多くの方に利用していただけると考えた結果です。

 昔からこの地が浄水場だった事を伝える史跡が園内にある

昔からこの地が浄水場だった事を伝える史跡が園内にある

 

―場所がすごくいいですね―

そうですね!都庁を見上げながらできます(笑)

オフィス街でもありますから、職場のチームで夜利用している人が多いです。

平日は午後6 時以降、土日は朝から予約でいっぱいです。

都庁を見ながらフットサルが楽しめる

都庁を見ながらフットサルが楽しめる

 

―そのフットサルコートを使って国際交流をされているんですね―

外国の方と一緒に活動できるものというのはフットサルかなと。

スポーツを海外の方とやることって、あまり無いですよね。

一緒にやったら楽しいんじゃないかと。この公園だからこそ出来る事です。

 

―会話は英語ですか?英語が話せない人でも参加できますか?―

会話は日本語が主です。

通じない場合は英語を使ったり、身振り手振りで頑張ります (笑)

もちろん、英語が話せない方も参加していただいています。

今、13名 7か国の外国人が参加しているのですが、

日本語を学んでいる留学生が主体ですので日本語がある程度話せるんです。

留学生からも日本語を勉強できると喜んでもらっています。

彼らは日本人との交流を求めているんですけど、

どこに行ったら受け入れてもらえるか分からないんですね。

このフットサルイベントは楽しいのはもちろんなんですが、

日本人との接点作りとして海外の方々に好評です。

 

―留学生にとってはいい勉強になりますね。日本人参加者からはどうですか?―

外国の方に対して、とっつき易くなったという感想があります。

このイベントの特徴はただの交流じゃなくて、”フットサルやりながら”なんですね。

スポーツの良い所はボールを蹴っているだけで交流になることです。

試合中の声かけだけでも交流になっているんですよ。

何を話したら良いかわからないという人でも、なんとなく話しやすくはなりますよね。

スポーツって不思議です。

 

―運動苦手なんですが参加できますか?―

僕も全くスポーツをやっていないです。ボールが足につかないですよ(笑)

高度な事をやるつもりはないのでどなたでも参加できます。

もちろん、うまい方もいらっしゃいますけど気軽に参加していただきたいです。

運動靴さえあれば気軽に参加できる

運動靴さえあれば気軽に参加できる

公園は地域の国際交流の中心地であるべき

年齢、性別、そして国籍関係なく気軽に利用できるのが公園です。

ランダムに多くの人が訪れる公園が国際交流に積極的に関わる事は、

市民レベルでの多文化共生の実現の大きな力になる。

「日本人との交流を求めているんですけど、どこに行ったら受け入れてもらえるか分からないんですね」

落合さんが仰っていた言葉は国際化が進まない日本の現状を如実に表している。

留学生だけでなく、日本に住む多くの外国人が感じている問題だと思う。

”国際交流”  ”多文化共生”

こんな言葉が並んでいても実際にこれらを実行しているのは、これらに興味がある人たちだ。

参加する外国人も同様で、イベントに積極的に参加し日本人の友達が多い場合が大半だろう。

もちろんこれらの人たちはどんどん国際交流すべきだし批判がしたいわけではない。

ただ・・・

”外国人との交流に自信が無い・きっかけがない日本人”

”交流手段が無く孤立した外国人”

彼らを置いてきてはいないだろうか?

新宿中央公園の取り組みは、

これまでの限られた人たちでの国際交流に疑問を投げているようにも感じる。

地域に開放された公園が国際交流の音頭をとることで

異文化をもつ隣人への理解も広がり、結果としてその地域の発展に繋がるに違いない。

 

フットサル交流イベント詳細

【活動名】   新宿中央公園フットサルサークル

【活動日時】  毎月第1・第3水曜日の16:00~18:00

【場所】     新宿区立新宿中央公園 フットサル施設など ※事前にお問い合わせください

【参加費】        外国人留学生:1200円/年 一般:2000円/年+500円/1回

【問合せ先】    新宿中央公園管理事務所「多文化共生プロジェクト係」

 TEL:03―3342―4509

 参加ご希望の方は事前にご連絡ください