『“違い”を強調しない国際交流を』 平和外交フォーラム 事務局長 加藤誠也さん インタビュー

27カ国の大使館職員と日本人参加者がヨーロッパにおける難民やテロ、ナショナリストの台頭についての講演会に耳を傾けていました。

都内のホテルで行われた

平和外交フォーラム

主宰しているのはUniversal Peace FederationというNGO。

Universal Peace Federation(以下UPF)は

国際経済社会理事会の特殊協議資格(国連での会議の参加や国連のプログラムを実施する資格)をもつ団体です。

ちなみに国際経済社会理事会とは経済および社会問題全般に関して必要な議決や勧告等を行う国連の主要機関。

そんなUPFは世界中に支部があり、各所共通の活動に加え、支部のある国に合わせた独自の活動をしています。

日本支部の独自のメインプロジェクトが今回筆者が参加した平和外交フォーラム

毎回違ったテーマで講演会、外交官や日本人参加者同士の意見交換を行っています。

年に3回行われ、来年で10周年。

今回はこのイベントを立ち上げた平和外交フォーラム事務局長の加藤誠也さんにお話しを聞きました。

柔らかい物腰の加藤さん

柔らかい物腰の加藤さん

UPF日本支部のメインプロジェクト “平和外交フォーラム”

―まず主催団体であるUPFの活動目的を教えてください―

UPFは国籍、民族、宗教を超えて人類家族という事が基本的なビジョンで、

そこを基に和解対話、平和を作っていくのが目的です。

 

―平和外交フォーラムは日本支部独自の取り組みと聞きました―

他の国にある支部だと宗教間、民族間の対立がメインテーマになったりします。

日本ではヘイトスピーチなどの問題もありますが他国に比べ、そこまで大きくクローズアップされているわけではありません。

なので私たちは外交官と交流してお互いの理解を深めて国際問題に関しての対話を進めようということをやっています。

毎回多くの人が集まる平和外交フォーラム

毎回多くの人が集まる平和外交フォーラム

―様々な地域の国の大使館職員が参加していましたが、どのように選んで招待しているのですか?―

日本にある全ての大使館に招待状を送っています。

ですから毎回参加する方もいれば、テーマによって来る国の方もいてその都度変わるんです。

最初は10カ国ほどの繋がりのある大使館中心だったですが、

1回目の評判が良かったので2回目から全ての大使館に声かけたんです。

それで2回目30カ国来たんですね。

今年で9年目ですので今では結構大使館の中で知ってもらえています。

「次はいつやるんだ」と問い合わせを頂くほどです^^

これだけの数の国が参加して一般の人が混じって行うイベントは少ないと思います。

懇親会の時間には外交官と意見交換など自由に交流が出来る

懇親会の時間には外交官と意見交換など自由に交流が出来る

 

―テーマはどのように考えているのですか?

核問題や海洋問題など国際的なもので地域に偏りが無いようなものをと考えています。

今回“ヨーロッパ”でしたけど、移民やテロなどアフリカや中東も関わっていますよね。

様々な国の方々が関心を持てるテーマを考えています。

また毎回、大学教授や退官された元大使の方、国連関係者を招き講演をしてもらっているのですが、

その登壇する方の専門分野になることもあります。

 

―同時通訳がありますね―

ご希望の方に会場で行っている同時通訳が聞ける機械をお貸ししています。

最初は先ほど述べたように大使館の方向けの催しだったんですが、

やっているうちに大使館だけではもったいないと途中から日本人の方も参加できるようにしました。

その時に同時通訳を導入したんです。英語が出来る人でも専門用語が出ると大変な事もありますから。

加藤さんは事務的な調整はもちろん当日は司会もする

加藤さんは事務的な調整はもちろん当日は司会もする

学生時代の濃密な欧州旅が転機

―平和外交フォーラムを始めたきっかけは?―

私が9年前に提案したんですけど、

それまで特に継続的に具体的な日本支部独自のプロジェクトというのがあまりなかったんですね。

そこで、外交官を集めてフォーラムをやったらいいのではないかと思ったんです。

提案した当初は「できるの?」という声もあったんですが、

私はモンゴルの経験があったので大丈夫ですよって言ったんです。

やってみたらよかったんですよ。3回目からは定着しましたね。

 

―モンゴルの経験とは?―

仕事でモンゴルに住んでいる時期があったんです。

その時、外交官と触れ合う機会があって、彼らがとてもフレンドリーだったんですね。

国によって違いますけど敷居が高い大使館でも声をかけてみる価値があると思いました。

あとアメリカや韓国で暮らしたこともありますから様々な文化、価値観に触れることの大切さを知っていました。

 

―元々海外に興味があったんですか?―

そうでもないんです。

父がアメリカ好きで幼い頃から海外の話を聞かされている程度でした。

といっても父はアメリカに行ったことが無い人だったんですが(笑)

初めての海外は大学3年生の時に行ったヨーロッパです。

旅行好きな友人がいて、一緒に行こうと誘われたんですよ。

円が一ドル260円で、まだ海外旅行が主流じゃなかった時代ですね。

その1か月ヨーロッパを周った後ドルがそれなりに余ったんで来年の旅行に使おうと思っていたんです。

そしたら翌年にプラザ合意があって、一気に円高になっちゃった。

来年使おうと思っていたドルの価値が半分になっちゃったんですよ。

暴落です(笑)

それからですね。日本で海外旅行が主流になりだしたのは。

そんな時代でした。

 

―いわゆるバックパッカーですか?―

パッケージなんですが、入国と出国だけが決まっているものだったんです。ですから自由に周れたんですね。

私はイギリスからヨーロッパに入って、スペイン、ポルトガルと来て、フランスに到着した時に風邪ひいたんです。

調子崩しながら東ドイツ、西ドイツを行ったんですが西ベルリンに行った時は熱が出てしまいまして・・・

友達には先に行ってもらって病院に行ったのはいいんですが、

私はドイツ語を話せないんですね(笑)

6カ国語旅行会話本みたいなものを持っていったけど病院ではあまり役に立たない。

そこで病院の先生が困っちゃって、ドイツに住んでいる日本人を呼んでくれたんです。

その日本人女性が本当にいい方で、通訳してくれただけじゃなくて入院していた私に

「退院してすぐ大変でしょうからうちに泊って行きなさい」

と言って立派な家に3泊泊めてくれたんです。

彼女のご主人は東ドイツ出身だけど、共産化していく祖国に危険を感じて日本に来て、

そこで彼女に出会って今西ベルリンに住んでいる。

そんな話をしてくれました。

それで海外への関心が高まったんですね。色々な話を聞いたり経験をしたので。

 

このパッケージツアーを主催した企業が寄稿文をツアー参加者から募集してたんです。

それで今回の旅の事を書いたんですね。入院したとか、ドイツ在住の日本人の家で寿司食べたとか。

それが採用されて翌年のパンフレットに紀行文が載ったんですよ(笑)

良い経験をしました。

その時ぐらいからです。

海外に行くと異文化に触れることが出来る、自分の知らない物を知っていくということが面白いと感じたのは。

 

―大学時代の強烈な初海外旅行が今に繋がっているんですね―

実際に行って自分の肌で様々な事を体感するということを若いうちから経験をするといいですよね。

日本と違う国があるというのを知ってもらうというのは大事なことです。

平和という観点から見ても、日本じゃこうすればうまく行くということが他の国で同じ主張をしたらうまく行くかというと、

そうとは限らない。

そういう色々な考えを知ることで和解が進んでいくと思いますね。

海外経験は大切だと語る加藤さん

海外経験は大切だと語る加藤さん

“違い”を強調しないことの大切さ

ただ、私自身は“違い”を強調したくないんですよ。

例えばアメリカ人は物事をはっきり言う人たちで、日本人は気を使って遠まわしに言う人だというイメージがあります。

でも実際アメリカに行くとアメリカ人も遠まわし言うんですよ。

彼らはハッキリ断った方が分かりやすいからハッキリ言うわけで、それはそれで気を使っているんですよね。

「日本とはこういう点が違う」という知識で知っておくのは良いけど、

それに囚われてしまうと今度は「日本とは違う」という前提の元で動いちゃう。

それってよくない事だと思うんです。

同じ人間ですから根本は同じなんですよ。

 

だからといって違いを気にしなくていいかというとそうではありません。

文化の違いを知識として知っておく、

それを知らなければなぜ相手がなぜ怒っているのか分からないことがあるわけです。

だから知識は重要です。

例えば宗教。

宗教的な戒律でやってはいけないことがありますよね?

そいうことは気をつけなくちゃいけない。

それを知っていれば相手を不愉快な思いをさせずに済むことがあるんです。

でも人間としてどうやって付き合うかというのは同じですよ。

表面的だけ見ると色々な違いを感じるかもしれないけど、深く入ればどこの国の人と付き合っても同じなんです。

 

―違いを知ることは良いけど、“違うもの”として付き合わない方がいいと?―

そうです。

違いに囚われて自分も同じように行動しなきゃいけないと思う必要はありません。

イスラム教徒の人と友人になろうとしたらイスラム教徒にならなきゃいけないかというとそうではないですね。

人間として付き合うんです。違いを理解しながらも根本は同じだと。

国同士の争いも同じです。お互い正しいと思う主張があるわけです。

例えばパレスチナ問題でもイスラエル、パレスチナそれぞれ正しいと思って主張をしていますし

両方とも正しいんですね。

ですから相手を理解するために話し合おうという所に辿り着かなくちゃいけないと私は思っています。

相手が同じ価値観だと思っているとぶつかります。

パレスチナ問題なら、双方が互いの価値観を尊重しなればいけないんです。

ですから違う価値観を持っているという知識は重要ですが、

その知識に囚われて相手を違うものだとして付き合うとそこには壁が出来てしまうんです。

私たちはそういったものを無くしたい。

UPFのビジョンである

「国家・宗教・人種・民族間の和解と調和の促進」

というのを外交フォーラムでしていきたいと考えています。

穏やかな物腰の中に強い情熱をもつ

穏やかな物腰の中に強い情熱をもつ

プロフィール

【加藤誠也】

UPF日本支部 平和外交フォーラム 事務局長。

アメリカ留学後、仕事と勉強を兼ねで韓国に滞在。

その後、再び渡米し通信員に。

1999年からモンゴルに約4年住む。

モンゴル滞在中はモンゴルのニュースを発信する傍ら、現地のNGOと協力して、

人道支援や民主化支援活動をしたことが評価され、帰国前にモンゴル国会から「感謝状」を授与される。

帰国後はUPF日本支部に所属し平和外交フォーラムを9年前に立ち上げ、

同イベントの運営責任者として活動している。