【シリーズ】リオ五輪を振り返る 国歌で ~⑦歌わないんじゃなくて 歌えない国歌たち~

歌詞が無い国歌

世界には歌詞が無い国歌がいくつかある。

正確に言うと”公式の歌詞が無い”と言うのが正しいのかもしれない。

スペインやサンマリノ、ボスニア・ヘルツェゴビナ(以下BHG)などがそうだ。

サンマリノは歌詞が無い理由がはっきりしていないが、国内問題が原因である事が多い。

もし自分が金メダルを獲得し国歌が流れたら歌いたいと思うに違いない。

しかし、これら歌詞の無い国々の代表には、それが叶わない。

建国史上初めてのメダルが金 コソボ

”コソボ”と聞くと紛争のイメージが強い。

残念ながらコソボという国がある事する知らない人がいる事は事実だ。

旧ユーゴスラビアはそれだけ多くの国が一つになったり分裂したりした地域。

紛争イメージはコソボ紛争と言われる独立運動のイメージだろう。

今回、金メダルを獲得した柔道家マイリンダ・ケルメンディは、紛争が終結した1999年に柔道を始めたという。

コソボ独立の翌年2009年、世界ジュニア選手権大会で優勝。実力はあった。

しかしロンドン五輪では、コソボがIOCに加盟承認を受けていなかったため、同国からの出場は叶わずアルバニア代表として参加することとなる。

そして今回のリオデジャネイロ五輪でコソボがIOCに加盟。

彼女はついに祖国の代表として参加する事が叶いコソボの旗を持って開会式を迎えた。

そこで手にしたメダルは

オリンピックの舞台で初めて国歌が流された。

しかし彼女の口は動かない。

それは祖国を恨んでいるからでも、泣きすぎて歌えないのではない。

コソボ国歌に歌詞が無いからだ。

なぜコソボ国歌には歌詞が無い?

旧ユーゴスラビア連邦は無理やり様々な民族を一つにまとめようとして失敗した。

その証拠に連邦解体後は、それぞれの民族が統治する国に分かれている。

しかしコソボの近隣国で同じく連邦傘下だったBHGは違った。

主に3つの民族が主張し合い、今でも政治の停滞を招く。

それは国歌にも表れ、それぞれの民族が主張し譲らないため今でも国歌の歌詞を定める事が出来ていない。

BHG大使館での取材レポートはコチラ

一方、コソボは90%以上をアルバニア人が占める。

そうなると政治は安定しているのでは・・・

というわけではないようだ。

独立直後、少数派のセルビア人が自治議会開設の宣言をするなど統一できているとは言い難い。

国歌に歌詞が無いのは、国が一つになりきれていない事に原因がある。

 

民族問題は複雑だ。

スポーツが政治を動かす事が出来るとは思わない。

しかし人々の心を動かす事は出来る。その人々の集まりが政治だ。

今回の金メダル獲得が民族間の対立解消のきっかけになり、

東京五輪では彼女がコソボ国歌を堂々と歌う姿が見れることを切に願う。